税務において考える”30万円”節税規定とは

税務において考える”30万円”節税規定とは

2020年09月13日日
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国民が振り回された現金給付「30万円」からの急転直下

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済対策として、安倍首相は大幅減収世帯への30万円給付を撤回し、全国民への一律10万円給付を決めました。

 この急転直下の背景として、公明党の山口代表が安倍首相に直談判したことが報じられました。公明党山口代表がこうした考えを示したのは、政党の支持母体(創価学会)からの強烈なプッシュががあったからだと考えられます。

 「大幅減収世帯へ30万円支給」なら財源4兆円ですが、「国民全員一律10万円」なら財源12兆円となり、第一次補正予算の大幅な組み換えを余儀なくされたようです。

 30万円給付案は”泡”となり消えてしまいましたが、税務の局面において30万円を考えるにあたっては、重要な規定がいくつかあります。今回は、これらの規定を取り上げます。

税務における30万円による節税規定は

1.減価償却資産であっても使用設置したときに全額が必要経費(損金)に

 通常、固定資産といわれる建物、設備、機械、備品、ソフトウェアなどの減価償却の対象となる資産は、法定耐用年数により事業年度に期間配分されたうえ、期間配分された事業年度の償却費として損金(費用)の額に算入(計上)されます。固定資産として支出した費用は、売上獲得のために長い年数をかけて売上に貢献することが相当と考えられているためです。

 ただし、青色申告書を提出する個人または法人で一定規模以下の者は、これらの資産の購入金額が30万円に満たないものを取得して事業の用に供した場合に、その取得した金額の全額を事業の用に供した年分または事業年度の必要経費または損金に計上(期間配分しないことが可能)することができます。
 個人とは、不動産所得、事業所得、山林所得を生ずべき業務を営んでいる人に限ります。

個人:減価償却のあらまし(国税庁)新しいページが開きます
法人:中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(国税庁)新しいページが開きます

2.資産の譲渡であっても所得税が課税されないもの

 日常生活で使用される道具、家具、食器、衣服など生活用の動産の譲渡による所得はもともと所得税がかかりません。(所得税法9条1項9号)
 しかし、貴金属や貴石(宝石のなかでも高値で取引されるもの)、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものである譲渡による所得は課税されます。(所得税法施行令25条)

 いいかえれば、貴金属や貴石、書画、骨とうなどで1個または1組の価額が30万円以内のものの譲渡による所得は、原則の非課税に立ち返って課税されないこととなります。

 生活に通常必要な資産に限られるため、30万円以内のものであっても投資目的、営利目的で保有する資産は非課税となりませんので注意が必要です。

3.被保険者一人当たりの年換算保険料が30万円以下のもの

 法人及び個人事業主が、2019年7月8日以降に契約した生命保険契約から、税務上の取扱いが見直され、変更されました。以下では、法人税基本通達9-3-5の2での取り扱いを参照しています。

(契約の形態)
 契約者 法人
 被保険者 役員または従業員など
 受取人 法人
 保険の種類 保険期間が3年以上の定期保険、第三分野保険(保険業法3条4項2号に掲げる保険のこと)

 この保険のピーク時の解約返戻率が〇%であるかにより、資産に計上しなければいけない金額が定められています。解約返戻率毎のおおまかな取り扱いは次の表のとおりです。

ピーク時の解約返戻率資産に計上しなければいけない金額資産に計上しなければ
いけない期間
・50%以下全額を損金の額に算入できる  ー
・50%超70%以下支払保険料の40%を資産計上する(*)保険期間の当初4割期間
・70%超85%以下支払保険料の60%を資産計上する  同上
・85%超ピーク時返戻率をもとに一定率を資産計上少なくとも10年間

 (*)被保険者一人当たりの年換算保険料が30万円未満(月当たりにして2万5千円)であれば、上図に定めた「40%の資産計上」に関わらず、保険期間を通じ、すべての保険料を損金の額に算入することができます。

さいごに

 税法には「少額不追求」ということばがあります。
今回取り上げた3つの規定に合致する趣旨かどうかは異論がありそうですが、「少額なものまで強いて追求し課税することは必ずしも妥当ではない」という趣旨のものです。

 冒頭に取り上げた政府の経済対策に振り回されるようなことがあっても、税法の規定には振り回されず、自らコントロールすることで、このような金額判定のある節税規定を使いこなせるようにしたいものです。

【編集後記】
スマホの買い替え時期ってホントにムズカシイですね。今回家族のスマホを買い替えるにあたって情報のアップデートは大事だなと思いました。販売側と顧客側との情報量格差が激しいうえ、数年前、いや、数か月前の常識がもはやあてはまりません。
いまや当たり前になったことは、
・契約解除料が9,500円ではない
・端末購入後6ケ月経過後のSIM解除が義務化された
・SIMフリー(解除)スマホをMVNOで契約、など
税法の改正もしかりで、数年前の常識にしばられず、アップデートしないと大変な惨事になりかねませんね。