雇用調整助成金を収入に計上するタイミングとは

雇用調整助成金を収入に計上するタイミングとは

2020年06月30日火
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雇用調整助成金の収入計上時期

 法人であれ、個人であれ収入に計上する時期はいつの時点でなければならないかということは非常に重要な問題です。
 これがわかっていないと納税の時期が思ったより早く来てしまったりとか、予期せぬことがありえます。

 雇用調整助成金は、18万件もの支給の決定がされました。申請はじつに28万件にものぼっており、今後も途絶えることがないと思われます。支給実績は1,362億円です。(いずれも令和2年6月26日現在)

 この雇用調整助成金についての収入に計上する時期(タイミング)について考えてみます。

 雇用調整助成金は、「新型コロナウイルス感染症の影響」により、「事業活動の縮小」を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るために、「労使間の協定」に基づき、「雇用調整(休業)」を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成するものです。

 国から支給されるこの雇用調整助成金は、経費の補填として助成されますので収入に計上する必要があります。

 そもそも、雇用調整助成金の算定の基礎となる従業員への休業手当は、「給与手当」として休業期間中の会社の経費に計上されますね。

 休業期間中の休業手当の支給対象期間に応じて、雇用調整助成金の申請を行いますが、この支給対象期間に応じて収益についても計上されなければなりません。

 実務では下記の取扱いを参考に収入の計上時期(タイミング)を認識します。

法人(法人税)の場合

法人税法基本通達 (法令に基づき交付を受ける給付金等の帰属の時期)
2―1―42
 法人の支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費を補填するために雇用保険法、雇用対策法、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。

 要約すると、雇用調整助成金の助成額が確定していなくても、見積った金額を、休業を行った期間の収益に計上しなければならない、とあります。

 入金があった日に収益を計上するわけではないので注意が必要です。経費を補てんするための助成金ですので経費計上と足並みをそろえよという趣旨ですね。

 個人事業主(所得税)の場合も同様の取扱いとなります。こちらは、所得税法基本通達36・37共―48に規定があります。

商品の収入計上時期

一方、商品(たな卸資産)の収入計上時期はというと、

例えば、時間軸で

3月26日:Aという商品を船積みで得意先(売上先)に出荷。
4月3日:A商品が得意先(売上先)に船積みで荷着。

ということがあったとします。

 このとき例えば、御社が3月決算で、商品の売上を記帳する場合に、

商品Aが得意先向けに船積みされた3月26日(当期)に売上(収入)計上するのか、
商品Aが得意先に検収された4月3日(翌期)に売上(収入)を計上するのか、

 これらは、どちらであっても相手方に商品Aを「引き渡した」という行為に違いがないわけですが、具体的に売上計上の時期(タイミング)についてどちらでなければいけないかということがあると思います。

 では先ほどのように「出荷」または「検収」のどちらが「引渡し」なのかについては法人税法基本通達2-1-2に次のように記載があります。
 「合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるもの」とされています。

 これは、「法人が継続して」とあることから商品Aについて今回は、「出荷」により収入計上とし、次回は「検収」を収入計上とするというような利益の操作はさせないよという趣旨が根底にあります。

 みなさんのところでも、どちらが収入計上のタイミングにふさわしい時期なのか考えてみるきっかけにしましょう。

 商品や製品などのたな卸資産を販売したことによる収益は、「引渡し」のあった事業年度の収入(益金)に計上することが法人税法基本通達2-1-2に明示されています。
 実務上、引渡基準を採用する限りにおいて実現主義の観点から不都合はないとされているからです。

【編集後記】
今日は6月30日。
ブログを始めてから丸4か月たちました。
その間、大学院の修了、コロナによる新たな生活様式の導入、藤井聡太七段の棋聖戦初タイトル獲得への活躍などなど。

これから4か月後また違った景色が見られるよう毎日準備を重ねます。