テナントビルの内装にかかる税金
テナントビルは、床、壁、天井などの建物本体の建築工事のほかに、その建物の使用目的に応じた電気設備、給排水衛生設備、空調設備、厨房設備などの内装設備が、家屋本体に附帯され設置されます。
これら附帯され設置されるものは、「特定附帯設備」といいます。
建物本体の建築工事には、不動産取得税、固定資産税などの税金がかかります。また、これらの内装(特定附帯設備)にも同じく、不動産取得税、固定資産(償却資産)税などの税金がかかります。(施工を依頼した建築業者からは、10%の消費税が上乗せされて請求されますから、施工業者へ当然に消費税を支払う必要があることはいうまでもありません。)
不動産取得税の取扱い
なかでも、不動産取得税は「土地や家屋の取得の行為」に対して課される税金です。
地方税法73条の2に、
不動産取得税は、不動産の取得に対し、当該不動産所在の道府県において当該不動産の取得者に課する。
とあります。
通常一棟のビルを新築した場合、付帯設備も含めてビル本体と同時にオーナーが「取得」することとなりますので、原則としてそのオーナーが納税義務を負うこととなります。
また一方では建築後、テナントビルにおいて、「テナント貸し」している部分を、テナント入居者が内装として自ら費用を負担し施工する場合があります。
これは、テナントビルに入居する店舗や事務所は、通常内装のないスケルトン状態で引き渡され、その後内装や設備については賃借人が費用を負うことが一般的であるためです。
このような場合テナントビルでは、建物構造部分と附帯設備部分とでは取得者(所有者)が違うことになりますが、オーナーが特定附帯設備も併せて家屋の全体を取得したものとみなされオーナーに課税されることとなります。地方税法73条の2第7項前段(みなし取得)。
自治体からは、このみなし取得をもとに建築オーナーへ課税通知の交付がなされます。
協議をした場合の課税の特例
ただこのみなし取得について話を戻すと、実際上、構造と設備とで費用負担者が異なる(すなわち取得した者が異なる)場合もあることから、建築オーナー(貸主)とテナント(借主)との間で特定附帯設備の税負担に関してトラブルになることが珍しくありません。
そこで、地方税法73条の2第7項後段では、次のように規定されています。
主体構造部の取得者が納税通知書の交付を受けた日から30日以内に、附帯設備に属する部分の取得者と協議の上、当該不動産取得税の課税標準となるべき価額のうち附帯設備に属する部分の取得者の所有に属する部分の価額を申し出たときは、その部分の価額に基づいて附帯設備に属する部分の取得者に不動産取得税を課するものとし、主体構造部の取得者に課した不動産取得税の税額から附帯設備の取得者に課した不動産取得税の税額に相当する額を減額するものとする。
すなわち、建築オーナーとテナントは、互いに協議をしたうえで、家屋を主体構造部と附帯設備に価額を区分して通知を受け取ってから30日以内にその区分した申請書を連名で提出してくれればそのように課税をしますよ、とのようです。
建築オーナー側からしてみれば、附帯設備はテナントの使途、仕様に応じた価値により決まるものですから、ある意味合理的であると思います。
実務での対応として重要なこと
実際、実務上で大事なことは、建築主とオーナーとで交わす賃貸借契約書に不動産取得税をどちらが負担するのかをはっきり明記すべきと考えます。
であれば、納税通知書の交付があった後でもあわてることなく事前の協議どおりの対応をすればトラブルになることはないでしょう。
家屋の附帯設備に属する部分に係る不動産取得税の減額(還付)申請書の概要(新潟県ウェブサイトへ)
家屋の付帯設備に属する部分に係る不動産取得税の減額(還付)申請書(Word形式 47キロバイト)
(新潟県ウェブサイトから)
【編集後記】
週末、エアコン2台の掃除をしました。これから先数か月、この2台のエアコンがフル稼働してくれることを願っていつもより念入りに。