【ポイント】
・住宅(居住用財産)を売却した所得は、譲渡益?であれば申告が必要?
・譲渡益かどうかの判断のポイントは取得費の算定にあり
・では、ひとまず簡便的に必要事項を入力して取得費を計算させてみましょう
今回行った売却が譲渡益or譲渡損のいずれなのか
住宅(自分の住まい)の売却による所得は、譲渡所得に該当します。
この売却による所得を申告すべきかそうでないかの判断について考えてみます。
譲渡所得は、「住宅を売却した金額」から「取得費」及び「譲渡費用」を差し引いて計算します。この譲渡所得が、プラスであれば譲渡益、マイナスであれば譲渡損となります。当然のことながら、プラスですと申告をする可能性が高まります。
申告の必要があるかどうかざっくりと譲渡所得を計算してみましょう。
そのために、
・売却金額・・・不動産売買契約書や通帳への振込額で確認しましょう。
・取得費・・・次見出しでさっそく 計 算 フ ォ ー ム に 入 力 してみましょう。
・譲渡費用・・・申告要否の判断をするうえでは不動産屋さんへ支払った仲介手数料だけ、考えておけば十分でしょう。
ちなみに、売却時に残っているローン残高の元本利息の返済は、収入から控除することはできません。
売却金額 > 取得費及び譲渡費用=譲渡益
(譲渡益のイメージ)
売却金額 < 取得費及び譲渡費用=譲渡損
(譲渡損のイメージ)
取得費の計算のポイント
譲渡所得(プラスになるのかマイナスになるのか)の計算に際し売却金額から差し引くものに「取得費」と「譲渡費用」があることを確認しました。
続けて、その「取得費」について確認していきます。
取得費が計算できるようになれば、その取得費だけで売却価額を上回り譲渡損となることもよくある話ですので、取得費がどれだけの金額になるかを先に計算してしまいましょう。
取得費について、テキスト形式で確認するのであれば国税庁ホームページ.タックスアンサー(よくある税の質問)No.3261建物の取得費の計算を参照してください。
取得費が算出できたら譲渡費用を加算して、上記のイメージ図を参考にして売却金額と比較してみましょう。
住宅の売却について確定申告が必要となるおもな事由
ただ、プラスになったからといって必ずしも税金が生じるわけではありません。
税金が生じなくとも、確定申告が必要になる場合があります。
そこで、プラスになったとき申告が必要となる理由として、大きく次の①、②、③に分かれます(②に該当する方がほとんどです。)
①納税が生じるため
②税額が軽減するような各種の特例の適用を受けるため
③その他
①、②はいずれも確定申告書を提出する必要があります。③その他は、レアケース(無申告加算税との関係)です。売却した住宅について当初は申告をしなくてよいという選択をした場合、後々において契約内容等に変更等があり、申告せざるをえなくなったとき、無申告加算税が課されることがあります。これを未然に防ぐようにするための申告です。
特例制度を適用するための様々な事由
第一段階での申告要否の判断ができたでしょうか。あとは譲渡益についての特別控除などの特例制度があります。これらに該当する方は、税理士または税務署にご相談ください。
下記のような場合、税金が発生しないまたは生じなくなる可能性があります。専門家にご相談ください。
・譲渡益が3,000万円以下である
・住宅の所有期間が10年を超えている
・住宅の増築をした
・平成21年及び22年中に取得した土地を売却した
・住宅の売却先が国、地方公共団体、土地の造成等を行う業者である
・住宅が収用された
・住み替える自宅は住宅ローン控除を受けたいと考えている
・その他まだあります
下記のような場合、確定申告の際注意が必要です。実行前に専門家にご相談ください。
・住宅を親族に売却したい、または贈与したい
・住宅を、配偶者に贈与したい
・途中、住まいを賃貸の用に供していた期間があった
・離婚の際の慰謝料として自宅を手放した
・家屋を取り壊してしばらくしてから敷地を売却した
・相続により取得した自宅を売却した(取得した自宅が空家になり売却したい)
・売却した住宅について最近まで住宅ローン控除を受けていた
・そもそも購入した金額がわからない(自宅は父母または祖父母から相続により取得しているなど)
・その他まだあります
相談の際、専門家に「取得費まで計算してありますが、税金払わなければいけませんか」、と尋ねれば、あなたが計算した取得費のチェックをし、特例制度の適用について親身になって考えてくれるでしょう。
クライアントとカウンセラーの関係
クライアントは、依頼人、カウンセラーとは、カウンセリングを行う人のことを指します。
今から2年前、
「申告の必要があるかないか教えてもらいたいだけなのに税理士や税務署に相談をするのには抵抗があるなぁ」
という方がいらっしゃいました。お金のことだからナーバスになりますし、そう思う気持ちもわかります。
このことの理由に、一般的なカウンセリング(相談)の特異性があげられます。相談者(クライアント)と税理士(カウンセラー)に専門的な情報量の格差があるためです。相談をした結果が相談者の側にとって的確な導きなのかどうなのかは、なかなか正直計れません。そこは、互いに正義の信頼関係をもって補えるべきものと私は考えています。
情報量に差があるというのは当然で、税理士は毎年12月頃に決定される税制改正大綱の意をくみとり、情報を毎年常にアップデートしなければいけない立場にあるわけです。
このことを以ってしなければ、税理士は納税者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現は図れないわけで、その相談者の信頼にこたえるため日々自己研鑽に努めています。
まえおきが長くなりましたが、住宅(自分の住まい)の売却についてどんな理由で申告しなければいけないのか、あるいは申告しなくてもよいのか、このことを事前に知ったうえで(相手との情報量の差をすこし縮めたうえで)、税理士、税務署に相談されるのが時間を有効に使う意義のあるカウンセリング(相談)と考えます。
住宅の住み換えや買い換えは、そうそう誰もが経験しないことです。一生に一度や二度あるかないか。そんなとき申告しなければならないのか、しなくてもよいのか、簡便的にでも自身で知っておいた方がいいでしょう。
(スマホ料金プランの見直しについて、WEBでリサーチした上で相談に行くのと行かないのとでは、安心感が違ってきます。見直しどころか、携帯会社は「でんき」や「保険」「金融(クレジット)」などを扱うようになったわけですから、それらが契約プランにどんな影響があることで進めてくるのかなど、と事前に予測しておいたほうがいいでしょう(情報量の差を縮めましょう)。
以上、申告の要否を判断するに際して優先して考えるべきことを確認してきました。譲渡所得の取得費をなんとなくでもわかっていただきたくこの(簡略な)自動計算フォームを活用してください。
【編集後記】
1月27日付で税理士登録しました!