【ポイント】
・観光庁より商品やサービス売上(利用)時の会計処理例が公開(本記事投稿時では11月2日に更新)されています。Go To トラベル事業 Q&A 集 P.31、Q134(11 月2日時点)
・事業者側と購入者側の適正な会計処理について確認してみます。
・法人の出張手配を目的とした予約サイトにおける割引の利用は制限するための措置が講じられました。
・いち早く会計処理を知りたい方は<目次>より該当する見出しへスキップしてください。
目次
GoToトラベル事業の概要
GoToトラベル事業がはじまり、はや4か月がたとうとしています。
・7月22日出発分から・・・旅行代金のみの割引が開始
・10月1日出発分から・・・旅行代金割引に加え、地域共通クーポン開始
GoToトラベル事業の概要については「国土交通省観光庁 GoToトラベル事業関連情報」に掲載されています。
宿泊・日帰りの国内旅行者を対象に、旅行代金の2分の1相当額の給付(支援)を行うものです。
旅行代金全体の35%が旅行代金に対する割引支援で、旅行代金全体の15%は地域共通クーポンとしてクーポン支援をするものです。この35%+15%=50%で旅行代金の半額の支援をする仕組みです。
引用元:国土交通省観光庁 GoToトラベル事業の概要・支援額の例(10月20日時点版)
観光統計調査からわかること
観光庁は、1年を四半期(1から3月、4月から6月、7月から9月、10月から12月)に分けて観光統計調査を公表しています。
1年を通じて旅行消費額、旅行者数が最も多いのは7月から9月です。
その7月から9月の調査数値を確認してみます。
旅行・観光消費動向調査(日本人・国内) 第3四半期比較(7月から9月)
引用資料:観光庁ホームページ
年 | 2017年 7月~9月 | 2018年 7月~9月 | 2019年 7月~9月 | 2020年 7月~9月 |
日本人国内 旅行消費額 | 6兆2,630億円 | 6兆4,422億円 | 6兆6,932億円 | 11月20日頃 公表予定 |
前年比 | +1.7% | +2.9% | +3.9% | ー |
日本人国内 延べ旅行者数 | 18,921万人 | 16,380万人 | 16,936万人 | 同 |
前年比 | +3.7% | -13.4% | +3.4% | ー |
日本人国内旅行消費額 前年同期比 -83.3%
日本人国内延べ旅行者数 前年同期比 -77.4%
上記の推移からわかるとおり、2018年から2019年にかけて旅行消費額、旅行者数とも上昇傾向となっています。
しかし、上記表内の<参考>にあるとおり、直近期間である4月から6月においては旅行消費額、旅行者数の落ち込みは激しく旅行・観光ビジネスへ与えたダメージははかり知れません。
まもなく公表される7月から9月の動向に先がける形で、観光庁ではGoToトラベル事業の利用実績について下記のように発表しています(いずれも11月12日現在の速報値)。
7月22日から10月15日までのGoToトラベル事業における利用実績
GoToトラベル事業の延べ宿泊者数 およそ3,138万人
GoToトラベル事業の割引支援額 およそ1,397億円
この割引額を、地域共通クーポンは含まない割引支援額のみであると仮定し、GoToトラベル利用額の35%と考えるとGoToトラベル利用者の旅行商品購入額は4,000億円弱となります。
旅行そのものが”マイクロツーリズム”に沿うものであったり、移動手段及び乗車率、乗船率、搭乗率を感染防止の観点から制限せざるをえない現状を考慮したとしても、2019年の7月から9月における数値にはまだまだほど遠く、到底及びません。【関連記事】「マイクロツーリズム」から考えるコロナ禍での飲食店の戦略とは
GoToトラベル事業を利用した旅費精算時の会計処理例
1.利用者(旅費精算をする会社)側の処理例
事例
Q社で働くAさんは、出張先での宿泊先を確保するため、Xトラベル株式会社(以下X社とする。)からGoToトラベル対象の旅行商品である宿泊プラン22,000円(税込)を購入し、現金で14,300円を旅行業者に支払いました。GoToトラベル割引額は、7,700円(22,000-14,300)です。(Q社でのAさんの出張旅費を精算する際に会計処理を考える必要があります。)
Q社の経理処理例
Ⅰ.Q社がAさんとの間で割引額を精算しない場合
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 | |
旅費交通費 | 20,000 | 現 金 | 14,300 | |
仮払消費税 | 2,000 | 雑 収 入 | 7,700 | |
課税10% | 不課税 |
GoToトラベル事業は、国が旅行代金の一部を補助しているのであって旅行代金が値引きされているわけではないので、旅行代金全額が課税仕入れとなることから、上記の処理例となります。Aさんが割引支援を受けた7,700円は一時所得として課税対象となります。
Ⅱ.Q社がAさんとの間で割引額を含めて精算する場合
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 | |
旅費交通費 | 20,000 | 現 金 | 22,000 | |
仮払消費税 | 2,000 | |||
課税10% |
会社から精算され受け取った22,000円からAさんが旅行業者に支払った14,300円を控除した差額の7,700円は、一時所得となります。(GoToトラベル事業は、国が旅行業者を通じて旅行者に対して行う支援であり、企業や雇用主からの支援ではない(給与所得ではない)と考えられるため、①と同様にこの給付は旅行者個人の一時所得として所得税の課税対象となります。)
参考:週刊税務通信No.3624 令和2年10月5日号
2.旅行・宿泊事業者側の処理例
事例
Xトラベル株式会社(以下X社とする。)はGoToトラベル対象の旅行商品22,000円(税込)を販売し、その代金のうち14,300円を現金で領収し、後日GoToトラベル事務局から割引額に相当する7,700円(22,000-14,300)の振込みを受けました。
X社の経理処理例
商品の販売時
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 | |
現 金 | 14,300 | 売 上 高 | 20,000 | |
未 入 金 | 7,700 | 仮受消費税 | 2,000 | |
課税10% |
事務局からの振込み時
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 | |
預 金 | 7,700 | 未 入 金 | 7,700 |
参考:週刊税務通信No.3624 令和2年10月5日号
週刊税務通信No.3628 令和2年11月2日号
法人の出張手配を目的とした予約サイトにおける割引利用の制限措置について
観光庁より「事務局が対象商品として適切であると認めるか否かの基準・考え方について」が公表されています。以前に増して人の動きが回復していることから、今後ビジネスにおける出張を目的とした旅行については「GoToトラベル事業」の利用を制限するための措置が講じられることとなりました。
【編集後記】
新語・流行語大賞にノミネートされた30語が発表されました。世界中が新型コロナウイルス関連の話題一色となり、やはり半数がコロナ関係です。我が家でのこのところの「鬼滅」は、大賞TOP1をあらそうほどです。