インボイス発行事業者になる前にいまこそ考える消費税のキホンとは

インボイス発行事業者になる前にいまこそ考える消費税のキホンとは

2021年09月12日日

2023年(令和5年)10月から消費税について「インボイス制度」が開始されます。
これに先がけて、2021年(令和3年)10月からは適格請求書(インボイス)発行事業者の登録申請が始まります。登録をしない選択も認められていますから、事業を営んでいる人は、自身にどのような影響があるのかを肌感覚で感じ取る必要があるでしょう。


 

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「インボイス」と「適格請求書」とは

「インボイス」を、ひとことで言えば、税額を別記した取引伝票のことをさします。

とりわけ消費税で、いま話題になっているこの「インボイス」は、

消費税の仕入税額控除*1の要件を満たす税率や税額等を記載した書類のこと

をいいます。インボイスは「適格請求書」とも言います。
*1 仕入税額控除は後半参照

「適格請求書」の根拠は、消費税法(令和5年10月1日施行)第57条の4(e-Gov法令条文が開きます)に規定されています。

通常、事業者間でやりとりしている「請求書」に、法律で定められた6項目の記載が備わると「適格請求書」と呼ぶことができるわけです。

ですので、請求書とは別に「適格請求書」を、新たにやりとりするという意味ではありません。

要件を満たしたときの請求書の呼び方のはなしですので注意が必要です。


 

請求書を「適格」請求書とするために

いま使っている請求書に6項目の記載が備わると、「適格請求書」になるとお話ししました。

実際には、6項目のうちのいくつかは、当たり前のようにすでに記載されている項目ですので、6項目のうちの不足している項目についてのみ対応すればよいことになります。

(ただ一定の場合には、この6項目について簡易適格請求書でよいことが認められています。)


適格請求書のイメージ

国税庁「適格請求書等保存方式の概要」ーインボイス制度の理解のためにーより

いま使用している請求書に

①登録番号

を記載することになります。

場合によっては、

④税率ごとの対価の額 及び 税率
⑤税率ごとの消費税額

を追記する必要があるでしょう。

おのおの対応が必要な部分ですが、さほどの負担にはならないと考えられるでしょう。

「インボイスに対応」した請求書発行システムの導入を考えている人は、インボイスに適応した適格請求書が作成されますので細かな心配は無用でしょう。


 

「インボイス制度」が始まるということ

冒頭、インボイス制度が開始するとお話ししました。

では、この「インボイス制度」が始まるとはどういうことか。

適格請求書(簡易適格請求書)を、売り手と買い手の事業者間でやりとりしますよということ

です。

そして、その適格請求書に記載されている消費税(⑤の囲み数値11,200円)をもって、仕入税額控除*1をして下さいねという話になります。
*1 仕入税額控除は後半参照

消費税額が記載されていない等の要件を満たさない請求書では、仕入税額控除はできないことになります。

買い手は記載されていないことについて疑問があれば、売り手に適格請求書の交付を求めることができます。

売り手は、原則として適格請求書の交付義務と保存義務があるためです。


このことから、

適格請求書(インボイス)は、

売り手が買い手に対し税率や消費税を伝えるための重要な伝達手段

ということがいえます。


この適格請求書を発行するためには、あらかじめ税務署に対して事業者登録をする必要があります。

適格請求書を発行する行為と、事業者登録はセットです。

事業者登録をしてこの法律で定められた適格請求書のやりとりをして、その保存をしておかなければなりません。

また、登録を受けていない事業者がこの適格請求書と誤解されるような書類を交付することは法律で禁止されており、罰則も設けられています。


事業をしていれば誰もに対して、少なからず影響があります。では、あなたにとってどういう影響があるのか。

それには、納付の流れ(事業者からの申告・納付)消費税の最終的な負担者(消費者)を考える必要があるでしょう。


 

ますます重要になる「仕入税額控除」

「インボイス制度」を知るうえで、消費税の「仕入税額控除」の理解は欠かせません。

「仕入税額控除」とは何のことか、何のためにあるのか、について見ていきます。

まず、消費税というのは間接税です。

国に税金を納めている事業者が、直接に負担しているわけではないというのが間接税の場合のシンプルな考え方です。間接税であることは、下図からも説明がつきます。


下図のように、生産、流通、販売の各段階で商品の販売やサービスの提供に対し、消費税が課されます。

この消費税に関しては、各事業者が預かった消費税をそのまま納めるという仕組みは取っていません。

売上げで預かった消費税から、仕入れで支払った消費税を控除して納める方式をとっています。

この支払った消費税を控除する方式を、「仕入税額控除」(下図青線)と呼んでいます。

国税庁「適格請求書等保存方式の概要」ーインボイス制度の理解のためにーより 筆者作成

上図の生産・製造業者、卸売業者、小売業者は消費税の納税義務者です。

納税義務者を課税事業者ともいい、消費税の確定申告を通じて消費税を国に納める者のことです。

これらの事業者は、間接的に消費税を預かっていますが、最終的に商品等を消費し、またはサービスの提供を受ける消費者が負担(10,000円)することになっているのが、消費税の特徴です。

そこで、中間的な事業者は、最終的な消費者ではありませんが仕入時に消費税を支払っています。同時に、事業によって得た売上には消費税を得意先から預かります。

この点に、「仕入税額控除」方式を採用するのに効率的な理由があると考えられています。


事業者は、商品やサービスの生産、流通、販売過程で確定申告により消費税を納付します。

生産・製造業者は5,000円。

卸売業者は2,000円。

小売業者は3,000円をそれぞれ国に納付します。

(下図表)事業者と消費税の関係

売上に係る
消費税
仕入税額控除納付する
消費税
生産・製造業者5,000円0円5,000円
卸売業者7,000円5,000円2,000円
小売業者10,000円7,000円3,000円
合計10,000円

1万円を”負担”しているのは消費者であって、その消費税1万円(5,000円+2,000円+3,000円)を国に”納めて”いるのはそれぞれの事業者となります。

あなたが、どの立ち場であっても課税事業者であれば、適格請求書の交付を受けることで仕入税額控除ができます。

課税事業者であれば…と言ったのは、免税事業者ですと消費税の確定申告をすること自体がないので、そもそも仕入税額控除の概念がでてきません。


 

発行事業者登録をしない選択

適格請求書の交付をしようとする事業者は、税務署長の登録を受けることができる、と消費税法では、規定されています。

先ほど言ったように、交付しようとする適格請求書は、売り手が買い手に対し税率や消費税を伝えるための重要な手段 です。

売り手が買い手に対し、というのがポイントで、売り手が買い手のためを思って「この金額で仕入税額控除をしてくださいね」、と言い換えたほうがより文脈は伝わるでしょう。

課税事業者同士での取引を前提とするならば、発行事業者の登録は必須となります。

登録をしなければ、インボイス登録番号が記載された適格請求書は発行できないこととなり、相手からもらう売上げ代金(相手から見れば仕入れ代金)は、買い手の立ち場において仕入税額控除ができなくなり、書い手は困ってしまいます。

ただし、課税事業者であればすべての人が発行事業者登録をしなければいけないのか、というと必ずしもそんなことはありません。

このあたりからは、次回の投稿にしたいと思います。


適格請求書発行事業者の登録、交付義務、免除、特例などについての個別的具体的な対応は顧問税理士にご相談ください。


【編集後記】
来週、Appleから新型iphoneが発表されるようです。私のiphoneは当時型落ちで買い、もうすぐ丸5年。FeliCa初搭載のグレードです。日常生活でも活躍してくれており不満という不満はないのですが、バッテリーの最大容量が78%に。買い換え推奨は80%を下回ったときだそうです…..。さてこれにのるべきかのらないべきか。