こんなときは事業年度(決算期)の変更を考えてみよう

こんなときは事業年度(決算期)の変更を考えてみよう

2020年07月19日日
スポンサーリンク

決算の時期

 決算時期をどの月にしようか考えることは重要です。株主総会の開催時期や取締役や監査役の任期とも関係してくるからです。

 株主総会は、会社法に規定する事項のほか会社の組織、運営、管理その他の会社に関する一切の事項について決議をする機関です。

 会社法296条では、「定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。」とあり、また、
 同332条では、「取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。」
とあります。

 どちらも”事業年度”を意識して定められている規定です。しかし、会社法上は、この事業年度についての定義がなされていません。

事業年度とは

 法人税法をみると、この事業年度について定義規定があります。

法人税法(第13条)
 この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(以下この章において「会計期間」という。)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(以下この章において「定款等」という。)に定めるもの・・・

と、されています。

事業年度=会計期間とあり、事業年度は定款に定めているもの、とあります。

事業年度の変更

 この事業年度ですが、手続きをふめば変更することができます。
ロジックはこうです。

1.事業年度は定款に定めがある。
   ↓
2.その定款の該当部分を変更する。
   ↓
3.その定款を変更するには株主総会での特別決議が必要。⇒
   ↓
4.特別決議の承認をもって事業年度変更の効力が発生
   ↓
5.最後に忘れず、事業年度変更の届出(所轄税務署へ異動届出書の提出)をする。⇒

①株主総会での特別決議とは

 発行済株式総数の過半数の議決権を有する株主が出席(委任状含、以下同じ)し、出席した株主の3分の2以上の賛成をもって成立する決議です。株主総会での決議は議事録を残しておきましょう。

②異動届出書の提出

 法人税法第15条に、事業年度を変更したら遅滞なく税務署長へ届け出なければならない、とあります。
国税庁Webサイトに「異動事項に関する届出」として掲載されているので確認してみましょう。

事業年度の変更が考えられうるケース

 事業年度の変更が考えられうるケースをあげてみました。

決算月が繁忙期であるケース
 決算最終月に多額の売上高の計上が見込まれ利益予測が困難であることから予測がたてやすい閑散期へ変更しましょう

納税(申告)月の資金繰りに余裕がないケース
 事業年度末日から2ケ月以内に法人税、消費税などを納めなくてはならないので、資金余裕がある月へ変更しましょう

親子間、兄弟間の会社で決算期がそろっていないケース
 企業グループ内での損益を的確に把握するのに時間と手間をかけていられませんのでグループ内で決算期をそろえましょう

決算期がそろっていない法人同士が連結納税制度を適用するケース
 みなし事業年度をおかなければいけなくなるので事務負担が増えることから決算期をそろえましょう

吸収合併をする予定である
会社分割をする予定である

 決算期をそろえてしまった方が手続しやすいと思われます

税制改正の影響はなるべく遅く受けたい
または、税制改正の影響を早めに受けたい

 例えば法人税の場合、税制改正の法律施行の開始時期は3月決算であることが多いので、増税路線へと税制改正が予定されているなら、2月決算あるいは3月20日頃決算へ事業年度を変更すると、3月決算の場合より”増税のあおり”を受けるのは11か月後となります

消費税の課税期間を変更したい
 事業年度そのものを変更する場合のほかに、消費税法にも課税期間短縮等の規定があります

役員報酬の改定時期を変更したい(早めたい)
 定期同額給与の要件となる役員報酬の定時改定の時期は決まっているので、損金に算入したければその時期を早めましょう

予定していなかった収益があがり納税時期を遅らせたい
 収益があがる月の前月へ決算期を変更し、収益があがる月を翌期の事業年度の課税へと納税をおよそ1年後まで先延ばしできないか考えましょう

【編集後記】
 ちょうど1ケ月後に実施される税理士試験の会場が公表されました。東京会場は、国税庁と幕張メッセに分散されたようです。幕張メッセでは、1度だけ受験したことがあります。時計を忘れたことに気づき近くのイオンまで慌てて買いに行った記憶があります(汗)。