臨時休業にしますかそれとも時短営業にしますか―Withコロナ時代を生きぬくための損益分岐点―

臨時休業にしますかそれとも時短営業にしますか―Withコロナ時代を生きぬくための損益分岐点―

2020年04月16日木

4月22日更新
新潟県三条市では、雇用調整助成金制度に該当する事業者について、国の助成対象とならない10分の1を市が上乗せし補助することを決めています。

5月7日更新
雇用調整助成金の特例措置のさらなる拡充はこちら
さらなる拡充とは、平均賃金の100%を休業手当として支払っている場合で、60%相当までは10分の9の助成率による助成を、60%を超えて100%相当までは10分の10の助成率による助成が受けられることとなりました。

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雇用調整助成金が使いやすく


 令和2年4月7日、政府は過去最大規模となる緊急経済対策(総額108兆円)を閣議決定しました。

「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」についての閣議決定に
関する詳しい内容(原文)についてはこちら(新しいページが開きます)


 そのなかに、雇用の維持に関する施策としての大きな柱の一つに「雇用調整助成金」があります。

雇用調整助成金とは、
・経済上の理由により、
・事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が
・雇用の維持を図るために
・従業員に支給する休業手当(1)に要した費用のうち
・一部を助成する制度
です。

 (1)…休業手当は、労働基準法26条に規定があります。
同条には「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、
使用者は、休業期間中その労働者にその平均賃金の百分の六十以上の手当を
支払わなければならない。」と規定されています。


 よって、この制度を利用して雇用調整助成金の給付を受けようと考えたら、休業するにしても時短営業をするにしても、その営業しなくなった時間中の賃金コストとして平均賃金の最低60%以上を、休業手当として支払わなければならないということがわかります。
 経済対策にあるように雇用の維持と事業の継続が途絶えてしまっては、元も子もないわけですから、休業か時短かを考えるうえでは時間帯別の売上高がどのような推移になっているか日々確認管理することが不可欠です。


 このようななか、この雇用調整助成金を使いやすくするため給付を受けるための条件が緩和され、助成額も拡充されました。

 雇用調整助成金の拡充の内容と要件緩和の内容
こちら(新しいページが開きます)

* 助成率は、3分の2 → 最大で10分の9
* 生産指標要件は1か月で5%以上低下に緩和

休業か時短かを決断する際の損益の分岐を知っておこう


 この雇用調整助成金制度が使いやすくなったことによって、

①完全休業してお店を閉めるのか。
②利用客が少なくなったので営業時間を短縮するのか。

といったような休業の決断がしやすくなりました。

 このいずれかの決断によって、従業員に対しては休業または短縮時間分の休業手当を支給し、その費用の一部(基本的に10分の9)を雇用調整助成金として受け入れることが可能になります。


(前提)
営業時間・休業要請前は18時から23時まで
    ・休業要請後は20時閉店とする
1日の売上高 ・休業要請前は30万円
       ・休業要請後は10万円(66%減)
原価率40%
人件費は1日7万2千円とし、休業手当は平均賃金の100%を支給する
下記の各ケースでの休業手当は助成額の上限以下を支給するものとする

話をわかりやすくするために家賃設定なし

上記に示した場合の一日の損益分岐点売上高を求めると、
120,000円 →72,000÷(1-0.4)
また、時間帯別の損益分岐点売上高を求めると、
20,000円 →12,000÷(1-0.4)
となります。


 最も注目すべきケースは4です。(このような結果になることはレアケースですがあくまでも損益の分岐のための問題として考えて下さい。)
仮に時短営業することにし、時短営業せざるを得なくなった時間分の雇用調整助成金の助成を受ければ損益分岐点売上高が12万円を下回っていてもこのケースのように、キャッシュがプラスになる可能性があります。


【ケース1.休業要請前】

営業時間帯売上高仕入高人件費通常営業時
キャッシュフロー
18時25,00010,00012,0003,000
19時37,00014,80012,00010,200
20時71,00028,40012,00030,600
21時97,00038,80012,00046,200
22時91,00036,40012,00042,600
23時79,00031,60012,00035,400
累計400,000160,00072,000168,000

*売上高40万円に対し、人件費控除後の手元キャッシュ残が16万円と業績好調。


【ケース2.休業要請後で23時までの通常営業】

営業時間帯売上高仕入高人件費通常営業時
キャッシュフロー
18時25,00010,00012,0003,000
19時37,00014,80012,00010,200
20時27,00010,80012,0004,200
21時10,0004,00012,000-6,000
22時1,00040012,000-11,400
23時0012,000-12,000
累計100,00040,00072,000-12,000

*利用自粛の呼びかけで20時以降の売上高が激減した。売上高10万円に対し1.2万円のキャッシュアウト。


【ケース3.休業要請に応じ完全休業(助成率が10分の9の場合)】

時間帯売上高仕入高人件費助成額完全休業
キャッシュフロー
18時0012,00010,800-1,200
19時0012,00010,800-1,200
20時0012,00010,800-1,200
21時0012,00010,800-1,200
22時0012,00010,800-1,200
23時0012,00010,800-1,200
累計0072,00064,800-7,200

*完全休業すれば仕入も止まる。休業し人件費として休業手当を支給する。休業手当の9割を助成金が補填してくれる。
もし、休業手当が平均賃金の80%と規程されているのなら、人件費欄が12,000円×0.8=9,600円となり、
助成額は9,600円×9割=8,640円となり、差額が会社からの持ち出し。


【ケース4.休業要請に応じ時短営業(助成率が10分の9の場合)】

時間帯売上高仕入高人件費助成額20時閉店
キャッシュフロー
18時25,00010,00012,0003,000
19時37,00014,80012,00010,200
20時27,00010,80012,0004,200
21時0012,00010,800-1,200
22時0012,00010,800-1,200
23時0012,00010,800-1,200
累計89,00035,60072,00032,40013,800

*21時以降の売上高の落ち込みが激しいので21時閉店とした。
営業時間中は助成金の補填はないが時短営業をする
こととした21時以降は補填されるため、
売上高の落ち込みを吸収してくれている。


 結論に濃淡をつけるために、売上高を極端にある特定の時間帯に傾斜しています。
ご自分の業績と照らし合わせシミュレーションすることをお勧めします。

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編集後記
「事業の永続的な継続」に「非接触化ビジネスへの経営戦略」の視点が必要となりました。
 例えば、お客さんの要望で「コンタクトはZOOMでお願いします・・・。」と言われたときにこれに備えることも経営戦略です。少しずつでもやれることを着実に準備実行していく必要があります。