路線価のコロナ補正がされなかった地域はどうすれば価格が下がるのか(その2)

路線価のコロナ補正がされなかった地域はどうすれば価格が下がるのか(その2)

2021年02月14日日
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前回(その1)について

路線価のコロナ補正がされなかった地域はどうすれば価格が下がるのか(その1)
【ポイント】・「災害」と「ウイルス」に対しての税務救済措置の違い。・財産評価の減額規定 と 租税の免除・猶予規定について。・令和2年中の相続、贈与の土地評価に用…
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(その1)では、財産の価値が減少した場合の外的な要因を、「災害」と「ウイルス」にわけたうえで、

「災害発生」、と「ウイルス蔓延」の影響でモノ(財産)、ヒト(納税者の担税力)に対してどのような救済措置があるのか確認しました。

例えば、「災害発生」について、「令和2年7月豪雨」では、

1.課税財産が減額される場合(モノへの救済措置)
2.税額が免除される場合(ヒト(担税力)への救済措置)

についての規定が設けられていることを確認しました。

 

 そして、昨年4月に施行された新型コロナ税特法では新型コロナウイルス感染症を「災害」とみなして取り扱う旨が明記され、今年1月には、大阪市の一部の地域において路線価に補正率を乗じて減額することを決定しました。

 新型コロナウイルス感染症の影響を受け一定の事由に該当した場合、

1.国税及び地方税の徴収の猶予(ヒト(担税力)への救済措置)
2.一部地域の路線価に補正率を乗じることにより減額(モノへの救済措置)

についての規定が設けられていることを確認しました。

 

路線価の減額補正の対象となった地域、ならなかった地域

 国税庁は、大阪市の一部地域を除き路線価の補正を行っていません(令和3年2月12日現在)。

 国税庁は当初、新型コロナウイルス感染症の影響で公示地価が路線価を下回る地域が確認された場合に、路線価の減額補正を検討することとしていました(下イメージ図)。

 補正率検討に際してのイメージ図

補正率適用に関しての時価と路線価の関係

 これにあてはまった地域、すなわち、右の図のように地価変動率が20%を超えた地域が、路線価の減額補正の対象になり(その1)で取り上げた3地域となっています。

路線価のコロナ補正がされなかった地域はどうすれば価格が下がるのか(その1)
【ポイント】・「災害」と「ウイルス」に対しての税務救済措置の違い。・財産評価の減額規定 と 租税の免除・猶予規定について。・令和2年中の相続、贈与の土地評価に用…
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土地の価格は1種類ではない

 前見出しで路線価の減額補正の検討が見送られた地域が数多くあることを確認しました。

 これら補正の対象とならなかった地域の路線価は、どうしても下げることができません。

 しかし、路線価を下げることはできなくとも、土 地 の 価 額(相続税または贈与税の評価額)は、下げることができます。

 これらのことについてみていくことにします。

 路線価は、道路につけられた価値を金額で表したものです。道路に値段をつけるのには意味があって道路に接するその土地の評価をして、評価額を算出するためです。

 

 

 土地の評価のための価格の算出方法は公的な評価だけでも、おもなものに、公示地価基準地価相続税路線価固定資産税評価額などの4種類があります。

このほかにも不動産鑑定士により評価してもらう方法もあります。

土地の取引(売買)価格は、これらを参考に決定されることが多いのが実情です。

 これら4種類の価格の性質の違いを、以下にまとめてみます。

 

公示地価基準地価相続税路線価固定資産税評価額
調査主体国土交通省都道府県国税庁市町村
(東京23区は東京都)
利用使途公共用地買収や補償等の基準として公共用地買収や補償等の基準として相続税・贈与税の算定のため固定資産税・都市計画税などの算定のため
価格決定の目安公示地価の80%公示地価の70%
評価
基準日
毎年1月1日毎年1月1日毎年1月1日*11月1日
(3年に1度)
公表日3月下旬9月下旬7月上旬4月下旬
それぞれの土地の価格の性質の違い

*1例えば、令和2年1月1日の基準日を用いて計算するものは、令和2年1月1日から12月31日までの間に相続、贈与により取得した土地が対象です。

参考文献:ざっくりわかる!不動産を買う・貸す・売るときの税金 伊藤達仁著 をもとに作成

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路線価による評価は、数あるうちのひとつの評価方法と認識すべき

 相続税や贈与税において土地等の価額(大きさ)は、『時 価』により評価することとされています。

 その相続税や贈与税を計算するために、その取得した土地の価額は『時価』で評価をすることが法律で定められているからです。

「・・・、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価に・・・よる。」

相続税法22条 下線は筆者

ここで、一口に『時価』と言っても様々な立場にたった『時価』があります。

そして、財産評価基本通達ではこの『時価』の意義について触れています。

「財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日・・・をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい・・・」

財産評価基本通達(評価の原則) 下線は筆者

時価とは、「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」であると規定しています。

 このように時価による評価が、評価の原則であることから、相続税・贈与税のもととなる土地の評価は

不動産鑑定士による鑑定評価額

に基づいて行うこともできます。

 路線価で評価することは、相続税等の申告の便宜や課税の公平に適っており、特に自分で時価の把握をすることが困難である場合には有効です。

 そういう意味では路線価は非常に便利です。しかし、一方で路線価による評価のみが相続税評価額と限らないということも念頭に置いておきましょう。

 路線価の減額補正がされなかった地域について、このような時価評価算定方法を考えてみるのもいいでしょう。(国税庁HPにも以下のように言及があります。)
国税庁HP:令和2年分路線価等について

 

贈与による評価の場面では令和3年以降に実行を

 国税庁は、令和2年公表の路線価による価格と、コロナによる緊急事態宣言下における土地の価格との間にどれだけの価格の開きがあるか調査をしました。

 その調査で土地価格が下落したにもかかわらず、路線価が土地の価格以上である地点については減額補正がされました。

しかし、地価変動率にして20%に達していない地域について、補正が認められなかった地点が多くあります。

 上イメージ図にあるような例でいうところの20%超の下落が認められなかった地域では、今回の補正がされなかったとしても、令和3年の公示地価の算出時点では、相応の下落となり公表されるはずです。

 不動産鑑定士の評価により評価が下げられても鑑定士への報酬コストなどはかかります。「路線価により評価」をするのであれば、令和3年での実行(令和3年贈与による土地の取得)を考えましょう。

 

 

【編集後記】
3th娘がzoomでオンラインダンスに申込み、参加。演目はNiziUのMake you happy。わたしも場外から参戦。そうすると、「パパ映りこんでるからあっちいってっ」「おっとゴメンよっ汗」