先日、国税庁ホームページ上で、新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱いとしてFAQが公表されました。
これは、国税庁がこれまで新型コロナ関連で寄せられた質問についての見解をまとめ、回答として公表したものです。
そのなかで、「業績が悪化した場合に行う役員給与の減額」として、イベント等の休止要請があった場合に年度途中で役員給与を減額したときの定期同額給与への該当性についての回答が示されています。
定期同額とは
「税」の世界での常識(税の世界から離れれば常識とはいいきれませんが…。)として、役員給与の増減の取り決めは、原則として1年に1度(定時株主総会時)までとされています。
「定期同額」は、定期(1年間)に同額(同じ固定金額)である必要があることを表しています。
給与支給が定期同額でなければ想定外の税金がとられるので、必要のない役員給与の上げたり下げたりは、あえてしないようにしている会社は多いです。
そもそも、同族会社においては、所有と経営が同一である場合が多く、この所有(株主)と経営(取締役)が同一であるために自分の給与を”お手盛り”のように決める会社も少なくありません(少なくないどころかこのようなことは当然にできてしまいます)。
会社は給与の上げたり下げたりで恣意的に利益の調整をし、その利益を少なくすることで法人税を低く抑えようと考えます。
このことへの対処として、国(国税庁)は上げたり下げたりを恣意的にさせないよう「定期同額」の法律規定をおいているのです。
これは日本の会社のほとんどが中小企業であることを考えてのことです。
業績が悪いなら役員給与を減額してみる
しかし、なんでもかんでも「定期同額」でなければいけないのか。
実際はそうではなく、「業績悪化改定事由」に該当する役員給与の減額改定であれば、改定前給与と改定後給与のそれぞれの給与は「定期」で「同額」、と言いはることができるようになるのです。
この「業績悪化改定事由」に
新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のための休業要請による業績悪化(家賃や給与等の支払い困難)が明記されました。
これは当然ですよね。
業績悪化が避けられない状況下(キャッシュインが見込まれない状況下)では、キャッシュアウトを可能な限り最小限にしていくことが必要です。
このような状況下では、「税金」や「社会保険料」などのコストを抑え、限りある量の資金をまず生き残るための資金へとトリアージしていかなければなりません。これら「税」や「社会保険料」の「先延ばし(支払猶予)」あるいは、「削減(停止)」をするための努力が必要です。
会社が負担する税金と個人が負担する税金のトータルで税負担を考える
会社決算が、赤字の見込みであるにもかかわらず自身の役員報酬を高額のまま下げずにいれば、個人所得税住民税として徴収されるがままとなります。
そこで、会社へ貸し付けている資金があれば、給与から減らした金額をこの貸している金額から返済金として受け取れば実質の手取りは変わらないことになります。
赤字幅を減らせ、個人所得税住民税も減額できます。会社への貸付金があれば実質の手取りが変わらないようにもできます。会社と個人のトータルで考えることが必要です。
従業員への賃金減額の際には自らの報酬減額も辞さない
業績持ちなおしの先行きがみとおせず、長期化が避けられない状況であれば、経営者は会社の経営を維持していくために固定費(人件費)を削減することも決断していかなければなりません。
しかし、経営のかじをとっていくのに必要な雇用の維持は、不可欠です。そうであるからこそ、従業員賃金の一時的な切り下げに同意してもらいたいと思えば、自らの給与を切り下げとすることは道徳的にも理解してもらいやすいといえるでしょう。
国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(国税庁webサイトへつながります)
【編集後記】
昨日の朝、オンライン申請により特別定額給付金を申請しました。
たまたま一週間ほど前からマンションの給湯器の調子が悪く交換することになり、これが手イタイ出費に。
・・・ですが、まあ、それでもこのタイミングでまだましだったかな・・・と思うべきかどうなのか。