「キャッシュレス納付」のメリットデメリット~ 令和の時代におけるスマートな納税のしかたとは

「キャッシュレス納付」のメリットデメリット~ 令和の時代におけるスマートな納税のしかたとは

2021年04月04日日

【ポイント】
・スマートな納税とはどんな納税のしかたでしょうか?
・対面型納付は何に手間がかかって、非対面型(キャッシュレス)納付は何がスマートなのでしょうか?
・メリット、デメリットから、自分に合った納税のしかたを考えてみましょう


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スマートな納税とは

 納税をスマートに行うためには、税金を納付する行為が、申告と「同時または即時(すぐ、すぐさま)」という流れになっていることが重要です。申告と納税はセットですから、申告→納税、納税→申告といった順番がちがっても申告と納税が「同時または即時」により完結することはスマートな納税を行うための必須条件です。

 「スマート」が何かを考えるため、コンビニで商品を購入するときを例にあげてみます。商品の購入と代金の決済は同時です。その決済手段として現金、クレジットカード、電子マネー、バーコード、QRコード、QUOカードなどの前払式プリペイドカードからの支払いなどの支払の手段が複数あるだけです。決済手段が複数あるだけで、いずれかによる決済と商品の購入は同時に行なわれます。

 今日における「商品の購入と決済」の究極的な姿は、「Amazon Go」(あの有名なAmazon.comが運営する食料品店) にみることができます。

 お客は、決済を意識することせずに、購入したい商品を持ち、そのままお店から外に出るだけで、決済が自動的に行われます。当然ながら “レジ待ち” や ”買い物かごからの袋詰め” がありません。決済を忘れていたとしても決済されている点、決済に”action”が紐づいていない点で究極的にスマートです。

 このように、商品の「購入と決済」を確定申告における「申告と納税」に関連付けて考えるのには、いささか無理がありますが、決済のためにactionを起こさなくてよいこの時代に、納税も”action”を起こさずいつの間にか完結している状態、これこそがスマートである納税といえるでしょう。

 そこで、あなたにとってのスマートな納税方法を考えてみます。


 

キャッシュレス納付とは

 キャッシュレス納付とは、現金(紙幣・硬貨)を使用しない非対面の納付方法を意味します。キャッシュレス納付の真の目的は「自宅や会社にいながらにして納付が完結できる」ということです。

 似たような言葉にキャッシュレス”決済”という言葉があります。キャッシュレス決済は、キャッシュ(現金)がレス(不要)ということですから、買い物代金の支払いを現金以外で決済するということです。そういう意味で、「バーコードやQRコードを読み取ってもらうスマホ決済」は、キャッシュレス決済の代表的な決済ですが、対面なしではできないことから”キャッシュレス納付”ではありません。

 キャッシュレス納付は、具体的には
・ダイレクト納付
・インターネットバンキングからの電子納税
・振替納税
・クレジットカード納付
などのことを指します。
 なお、ダイレクト納付や振替納税の利用にあたっては事前に税務署への届出の提出が必要になりますので注意が必要です。

 次に、国税の納付手段について、納付手段全体の件数からキャッシュレスによる納付件数が占める割合を確認してみます。

 全体の納付件数のうち、キャッシュレスによる納付率は 23%(オレンジ) と、いまだ4件のうちの1件程度でしかありません。このことから、オンラインへの移行がなかなか進んでいないことがわかります。(このことは、源泉所得税の納税に関してのオンライン化が進まないと、相対的にこの割合はあがらないということが指摘されています。)

 一方で、法人税の申告件数の割合(2018年実績)を、”電子による送信”かそうでないかという点で区別をしてみると、電子送信が 84.3% と高い割合です。申告に関してはオンライン利用率が高く、年を追うごとに年々増加しているといえます。


 令和3年4月7日現在、税金を納付する手段として下記のものがあります。
国税や地方税を問わず、納税を対面型非対面型とに分けて整理してみます。


 

対面型納付(非キャッシュレス納付)

・税務署、銀行等で現金納付
・バーコードを利用したコンビニ納付
・QRコードを利用したコンビニ納付(2019年1月から利用開始)

おもな納付手段メリットデメリット
税務署、銀行等で現金納付全ての税目で利用可能・手書き(原則訂正不可)
・納付書を取りにいかなければならない
コンビニ納付
(バーコード)
24時間現金納付ができる・納付額は30万円以下に限る
・QR支払いが可能になってから推奨されてない
コンビニ納付
(QRコード)
24時間現金納付ができる
納付書をコンビニで出力できる
・納付額は30万円以下に限る
・セブンイレブンで利用できない
対面型納付におけるそれぞれのメリット、デメリット

 これらの納付の方法は、対面しなければ支払うことができません。自宅または会社で電子申告することを前提とすれば、申告と納付が一気通貫とはならないので、決してスマートとは言い切れないでしょう。

 2019年から新たに導入されたQRコンビニ納付は、納付書をわざわざ取りに行かなくてはいいものの、現金をATMからおろさないといけないという意味で、納付書による現金納付に比べても、その不便さは解消されていないと考えられます。


QRコンビニ納付


 

非対面型納付(キャッシュレス納付)

・口座振替納付
・ダイレクト納付
・LINEpay*1
・PayPay*1
・クレジットカード納付
・ペイジーを利用した納付(ネットバンキング・モバイルバンキング・ATMを利用した納付)
*1新潟県長岡市では、固定資産税都市計画税、軽自動車税、県民税市民税(普通徴収分)が納付できます。
長岡市:市税を納める方法(スマートフォン決済アプリ)

おもな納付手段メリットデメリット
口座振替納付安全で確実な納税方法利用できる税目は限られる
(所得税・個人消費税のみ)
ダイレクト納付場所、時間の制約がない
(自宅にいながら24時間納付可能)
・利用届出書を書面によった場合は
利用可能までに1か月程度を要する
(オンラインでは1週間程度)
クレジット
カード納付
場所、時間の制約がない
(自宅にいながら24時間納付可能)
決済手数料(*2)がかかる
非対面型納付におけるそれぞれのメリット、デメリット

(*2)クレジットカード納付における決済手数料とは
(*2)決済手数料についてシミュレーションしてみたい人は、国税クレジットカードお支払サイト
 例:税額50万円に相当する決済手数料は4,180円


 なかでも、ダイレクト納付については一度利用を開始すれば簡単、便利であると考えます。

 ダイレクト納付は、下記に詳細が記載されています。またその利用方法は、次の2ページめに記載されています。(クリックしてページを送ってください。)


direct_納付


ダイレクト納付がスマートなところをあげると

・即時に納付可能
・納付日を指定した納付が可能
・「予納」(あらかじめ納付日や納付金額を複数回定めての納付)が可能
・利用者識別番号と暗証番号だけで納付手続が可能
・毎月納付が必要となる「源泉所得税」を納付しようとする人に便利
・インターネットバンキングの契約は不要
・電子証明書の添付は不要
・ICカードリーダライタ(ICカードを読み取る装置)が不要


 この機会に、納税を、シームレスかつスマートに、行うことができる自分なりの方法を考えてみましょう。


下は、国税庁動画チャンネル「国税の納付もキャッシュレス納付」~ダイレクト納付のご紹介~
4分25秒の動画です。

国税庁動画チャンネル

【編集後記】
新年度がスタート。子どもたちは、進学に進級。先日、私は3ケ月前に行われる予定だった「税理士登録式」に参加してきました。税理士のクライアントである企業が淘汰されている今日、当然に相対的に競争は激しくなってきています。そんな競争には飛び込まず、立ち入らず、必要とされる事に対してまっすぐ、また、税理士として「後発だからできること」が必ずあるはず、と考えます。そこは意識して日々の業務に取り組んでいきたい。