【ポイント】
・「災害」と「ウイルス」に対しての税務救済措置の違い。
・財産評価の減額規定 と 租税の免除・猶予規定について。
・令和2年中の相続、贈与の土地評価に用いる路線価は一部地域でコロナ補正されることに。
外的な要因…で財産の価額が大幅に下落したとき
外的要因により被害を被った事象に対する税制面での救済措置としては、大きくふたつの面から考えることができます。
・財産の評価を減額する面から
・人が納税を減免されたり、または猶予を受ける(担税力の機能回復)面から
キーワードは財産(モノ)なのか、人(ヒト)なのか、です。
外的な要因を「災害の発生」と「ウイルスの蔓延」のふたつになぞらえてみます。
そして、これらのそれぞれが起こったとき、税制が「モノ」と「ヒト」のどちらに寄り添っているのか考えてみます。
Ⅰ.下落原因が災害である場合
いわゆる「災害」の範囲は、国税通則法46条1項(納税者が損失を受けた場合に税金の徴収を猶予してくれる制度)に規定されており、「震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害」です。
「災害」についての 租税の減免、徴収の猶予 については、国税通則法や災害減免法に規定されています。
災害に遭って困難に陥るのは、存在していた「モノ」であると同時に被害に遭った「ヒト」です。水害に遭って家(モノ)が流されたり、納税しようにも納税環境(金融機関、インターネット)が整っていなければ(ヒトは)納税することはできません。
モノ(物体)
災害減免法には、相続財産が災害により損失を受けた場合に、災害の程度により評価を減額してもよい旨の規定がおかれています。財産の評価額に被害割合を乗じた被害相当額部分を、財産額から控除して算出する方法です。
ヒト(担税力)
災害により被害を受けると被害を受けた部分の程度により、税金が免除されます。
例えば相続財産である建物が全壊してしまった場合には、建物の相続税は免除されます。
「モノ」と「ヒト」については以上のように、いわゆる災害が発生した場合にはこれらのどちらに対しても救済措置なるものがあります。
令和2年7月に起きた豪雨災害についての規定についても、このどちらにも救済される措置となりました。
国税庁HP:相続税又は贈与税の災害減免措置について(令和2年7月豪雨用)
一方、コロナ感染症が蔓延していることによる直接的あるいは間接的な被害についての救済措置としてはどうでしょうか。次で確認してみましょう。
Ⅱ.下落原因が新型コロナ感染症によるものである場合
昨年、大都市圏の商業地を中心に土地価格の下落が確認されました。
新型コロナウイルスの影響で国民への外出自粛要請の影響を受けたことが原因と思われます。
Ⅰで指摘したように、災害を被った「財産」には物的な損傷が明白です。一方で、新型コロナ感染症により侵されるのは「財産」ではなく「人」です。
いわゆる「災害」の範囲は、国税通則法46条1項(納税者が損失を受けた場合に税金の徴収を猶予してくれる制度)に規定されており、「震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害」です。これには今回の新型コロナのような感染症による事由は含まれていません。
しかし、令和2年4月に施行された「新型コロナウイルス感染症税特法」では、この新型コロナウイルス感染症を46条1項の災害とみなして(先ほどの災害に含めて)取り扱う旨が明記されました。
そして、
新型コロナ税特法により一定の事由(売上の減少など)に該当する「ヒト」は国税や地方税についての徴収が猶予されることになりました。
これは、「人」(担税力)への措置です。
一方では、コロナ被害による「モノ」(財産)への救済措置はどうか。
国税庁は相続・贈与する土地の評価について、次のように取り扱うことを決めました。
令和2年7月に公表した路線価*1について、令和2年1月1日時点と比べて著しく下落している地点については、路線価に補正率を乗じることによる減額補正することを決定しました。
*1路線価は、道路につけられた価値を金額で表したものです。道路に値段をつけるのには意味があって道路に接するその土地の評価をし評価額を算出するためです。
しかし、現時点で補正がされるのは大阪市中央区の一部地域のみです。この一部地域は地価変動率が20%を超えた地域です。
下図のように、令和2年7月から9月に相続または贈与により取得した土地が対象です。10月から12月に相続または贈与により取得した土地については、4月頃に公表される見込みです。
町・丁名 | 地価変動補正率 | 補正前 (7月1日公表時) | 補正後 (地価変動の補正後) |
心斎橋筋2丁目 | 0.96 | 2,152万円 | 2,065.9万円 |
宗右衛門町 | 0.96 | 2,087万円 | 2,003.5万円 |
道頓堀1丁目 | 0.96 | 1,865万円 | 1,790.4万円 |
全国の商業地域を中心に土地価格に影響が出ているのは明らかなのですが、この地点だけが補正の対象になりました。
20%を超えた地域だけが対象になったのはなぜか、
また、補正の対象とならなかった地域はどのようにして価格を落とせばよいのか、
長くなってしまうのでこれらについては、その2で確認したいと思います。
【編集後記】
UQモバイルにMNPしました。これで、5社目になるかな(ドコモ→au→ymobile→楽天mobile→UQmobile)。うちはiPhoneが4台+iPad1台の計5台の電波が家庭内に交錯していて、ときおり混雑してますが、プランの見直しで家族みんなで(3th娘除く)でUQに乗り換え予定です。サブブランドでもカケホプランの契約ができるようになったことが一番の理由かなと。家計的には助かるからね。