年払い契約等の場合の売上減少要件とは~令和3年度固定資産税等軽減免除から

年払い契約等の場合の売上減少要件とは~令和3年度固定資産税等軽減免除から

2020年12月20日日

【ポイント】
・令和3年度に賦課される固定資産税等については、軽減免除の特例措置が設けられています。
・売上減少(30%以上または50%以上)の要件となる期間は2020年2月~10月までの任意の連続する3か月間が対象です。
・「ひと月当たりを算出」する意味と、「3か月間の事業収入」とは意味が異なる。
・賃料を年払い契約により収受している場合の売上減少要件の該当性について、中小企業庁及び課税自治体に確認しました。

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令和3年度の償却資産税申告をする際には注意を

 令和3年1月4日から、償却資産税の申告書の提出受付が始まります。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた一定の事業者については、これに併せて「新型コロナウイルス感染症等・・・に係る特例措置のための申告書」*1も同時に提出することになりますので注意が必要です。
*1新型コロナウイルス感染症の影響により事業収入が大幅に減少している中小企業者や小規模事業者の税負担を軽減するために、固定資産税及び都市計画税を減免する制度が創設されています。

 詳しい内容は、こちらをご覧ください。

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会計の月次損益から考える「ひと月あたり」の重要性

 会計では、正確な月次損益の把握とその推移を分析するために月次損益推移表(毎月の損益計算書を12か月分並べたようなもの)を作成する場合があります。
 なかでも、年払い契約は年に1回のみの収入、固定資産税は年に4回の支払いなど、収入支出が毎月生じないものがあります。
 このような毎月生じないものをひと月あたりの金額に換算し、月次損益を確定させ推移表を完成させる必要があります。
 賞与の支払いにおいても例外ではなく、夏期および冬期に支払うものをひと月あたりの引当金額として求めます。
 このように年払い契約による収入、固定資産税等、賞与の引き当て額などをひと月あたりの金額に換算し推移表に表します。毎月の損益を把握することで、月次の損益がどのような状態(健康な状態かそうでない状態か)にあるかを診断するためです。
 年間固定資産税に対し毎月の賃料収入は適正か、年間の賞与負担は適正かなどとみるわけです。
 このようにすることで、ひと月ごとにおける月次の損益が正確に把握できますし、また、予実の管理がしやすくなるわけです。
 これは会計の世界において、必要かつ重要なことです。

 ひと月あたりの考え方を覚えておきましょう。

 

一定期間払いの契約をした場合の「・・・事業収入」の解釈

 前段では、ひと月あたりで考えることの重要性を確認しました。
では、以下の事例ではどのように考えたらいいでしょう。ひと月あたりで考えることは果たして適正なのかどうか。
 ひと月あたりで考えたくなりますが、実は論点が前段とは異なることがわかります。
 事例をあげて考えてみます。

事例

 個人Aは不動産賃貸業を営んでいました。
 Aは自ら所有する4階建てのビルを下記のような契約条件により賃貸していました。
1階フロア・・・スポットによる会議室使用料収入(その都度時間貸し契約)
2階から4階フロア・・・法人Bをテナント先とする賃貸収入(1年ごとの契約更新)

(法人Bとの賃貸借契約の内容:一部抜粋)
・第3条 賃料及び支払期限
賃料は、1年360万円とし契約期間開始月の前月末日(8月末日)までに支払うこととする。
・第4条 支払条件
Bは、前条に掲げる賃料につき年に一回、Aの指定した期日までに指定された銀行口座へ支払うものとする。
・第10条 契約解除の場合の賃料
Aは、Bから〇条に規定する契約の解除を受けた場合には、解除の申し出を受けた月の翌月から契約期間終了の月までの未経過賃料相当額はBに返還するものとする。

課題設定

★賃貸ビルから生じる収入は、毎年個人Aが所得税の確定申告をしている。
★不要不急の外出の自粛が要請されるなか、さまざまな会議がリモートでオンラインにより開催されることにより1階の使用料収入がなくなった。
★令和3年度の賃貸ビルに係る固定資産税等は60万円と想定される。

「任意の連続する3か月間の事業収入」の解釈から考えられること

★「任意の連続する3か月間の事業収入」は「ひと月あたりの金額」で考えるのか
★「任意の連続する3か月間の事業収入」は「約定(契約の定め)の月における金額」で考えるのか

年払い契約における賃料収入について、
Ⅰ.約定(契約の定め)どおりに計上する場合と、
Ⅱ.年間賃料を各月により発生計上した場合(ひと月あたりにより計上した場合)とで、
それぞれ固定資産税等の軽減免除における売上減少要件に該当するかどうかを確認します。
それぞれ4月から6月における期間を比較する対象月とします。

Ⅰ.約定(契約の定め)どおりに計上する場合の賃料推移(単位万円)

Ⅰの場合の減少割合は、100%となり売上減少要件に該当します。よって、固定資産税等の全額である60万円が免除されます。

 

Ⅱ.年間賃料を各月により発生計上した場合
(ひと月あたりにより計上した場合)の賃料推移(単位万円)

 Ⅱの場合の減少割合は、4.76%となり要件に該当しないこととなります。

 

収入の計上時期が問題(Ⅰの考え方により要件に該当)

まず、会議室の使用料及びテナントへの賃貸料収入は「事業収入」にあたります。

・事業収入は、収益事業から生じる経常的な収入をいいます。
臨時的でありまたは偶発的な収入は含みません。

事業収入に含まれないものの例示
持続化給付金、家賃支援給付金、雇用調整助成金などの各助成金や補助金、
固定資産売却益、保険金の収入による差益など。
*不動産賃貸業を営んでいる者の不動産(固定資産)の売却収入は
棚卸資産の売却にあたりますので固定資産売却益には含みません。

次に、事業収入の月々における計上時期の考え方について、中小企業庁HPには言及がありません。(どの月にどれだけの収入が帰属するかの具体的な事例、指示などはありません。)

「1年で360万円の契約」であるので「ひと月あたり30万円の契約」と考えがちです。
「ひと月あたりの金額がいくら」である場合の前年比較を問題にしているのではなく、「収入の計上時期」がいつになるのかを考慮し比較したうえで要件に該当するかが問題になります。

 本特例措置は、確定申告における記帳を前提とした収入金額の収入計上時期によるべきと考えられますので、下記参考に示す通り「契約により定められている日(月)」によりその月の収入金額に計上するのが通例と言えるでしょう。(私見)

 よって、要件に該当し減免が受けられるといえるでしょう。

 

【参考】所得税法基本通達36-5
(不動産所得の総収入金額の収入すべき時期)
不動産所得の総収入金額の収入すべき時期は、別段の定めのある場合を除き、それぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1)契約又は慣習により支払日が定められているものについてはその支払日、支払日が定められていないものについてはその支払を受けた日(請求があったときに支払うべきものとされているものについては、その請求の日)
(2)省略

【関連記事】テナントが施工した内装にかかる税金はだれが負担するのか

 

本事例における中小企業庁からの回答

「本事例のようなケースは、Q&Aに掲載がされておらず認定経営革新等支援機関等の証明しだいです。」と回答がありました。

 みなさんが依頼をする認定経営革新等支援機関等はどのような判断をされますでしょうか。

お問い合わせは、下記のフォームからお願いします。 *ワークライフバランスを考慮しながら早めにお返事します。*もし3日間経過しても返事が来ない場合、メールアドレス…
katsunoriosaki.com

 

【編集後記】
「鬼滅の刃」×「ダイドーブレンド」のコラボ缶……販売好調のようで、映画に続きこちらでも衰えをみせません。
我が家の3th娘は「無一郎」の熱烈なファン。ようやく今日、自販機から念願の「無一郎」を手中に。さて・・・、自販機にお金を入れることこれで何本目だっけ(汗少々)。