「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」いわゆるコロナ税特法が、令和2年4月30日に成立施行されました。
納期限とは
「納税」には期限があります。
・所得税や贈与税は、その年の翌年の年3月15日まで。
・法人税は、各事業年度の終了の日の翌日から2月以内。
・相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内。
租税を納付すべき期限を「納期限」といい、上に掲げたものはいずれも「納期限」です。
納税者は、確定申告書を提出する期限までに納税をすませる(基本的に申告書期限=納期限です。)ことになっており、税務署に対して申告書により「申告」し、申告税額をもって「納付」することになります。
納税の猶予とは
何らかの理由により納税資金を欠いており、税金の納付が困難であると認められる場合に、納期限が経過した後において「納付を猶予(ゆうよ)する行為」のことを『納税の猶予』としています。
一般的に「納税の猶予」といえば、国税通則法第46条以降にその規定があります。
46条1項の主なポイントについては、
・納税の猶予を行うのは税務署長(税務署長が主語なので)。
・震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により財産に損失を受けたとき。
・猶予期限は、納期限から原則1年以内の期間。
・納税者(申請者)は申請書を納期限から6か月以内に所轄税務署長に提出しなければならない。
となっています。
これにより、延滞税(納期限から実際に納付を完了した日までのいわゆる延滞利息のこと)が
年8.9%(通常)のところが 年1.6%(猶予)へと軽減されます。
コロナ特例の納税の猶予とは
コロナ特例の納税猶予は、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律(コロナ税特法)第3条に規定が置かれています。
上記46条の要件のほか、
・コロナの影響により令和2年2月以降のいずれかの期間において前年同月比の収入が20%以上の減少
が、あらたに要件にくわえられています。
延滞税はかかりません。
6月30日までは既に納期限が経過している未納の国税についても、このコロナ特例猶予を遡って適用することができるようです。よって、既に上記46条の納税猶予の申請を受けた方は、このコロナ特例猶予に切り替えができます。
コロナ禍での納税猶予適用(消費税)の具体例
例:宿泊業を営む9月決算法人
・中間申告の納期限は、6月1日(令和2年は5月31日が日曜日なので6月1日となる。)
・中間消費税(*1)は、300万円。中間決算(*2)を組むと消費税は200万円(*3)となる
(300万円の消費税は中間決算を組むことで200万円となる意)
・現在、会社の預貯金は350万円
(*1)前期1年分の消費税の半分のこと 中間決算を組まなければ消費税は300万円
(*2)10月から3月までの6か月間決算のこと
(*3)中間決算期末の仮払消費税と仮受消費税の残高差額のこと
これらの前提にもとづき、下記3つのいずれかのtaskを考えてみます。
さて、あなたはどれを選択しますか。
task:A 中間消費税300万円を払う。期限は6月1日。
task:B 300万円を納めたくないので仮決算を組み200万円を払う。期限は6月1日。
task:C 中間決算を組まずにコロナ税特法の猶予の特例申請書を提出(要件は充足)する。
納税が猶予された承認額は300万円。納期限は11月30日。
さあいかがでしょうか。
考えるにあたっては、下記の2つがおもにポイントになってきます。
・現在350万円しか預貯金がないということ。
・納期限がいつなのか。
そこで、いずれを選択するかについて考えなければいけない重要なことは、
・客室稼働率が前年と同じくらいまで、または、ある一定程度までに回復するのにどのくらいの期間を要する見込みか。
・本決算での消費税はどのくらいになるかの仮説をたてる。それは200万円なのか、300万円なのかまたは400万円なのか。
ということです。
ちなみにどれを選択するかといっておきながら、これにはもちろん正解なんてありません。
いずれを選択してもいいのです。どれを選択しても経営者の判断です。
ただ、会社のキャッシュを血液のように循環させ、行き詰まらせることのないようなベターな決断が望まれます。これは重要です。
消費税を猶予してもらい350万円を酸素ボンベのごとく延命のための資金繰りとして使ってよいのです。
有事の際、とくに言えることですが、キャッシュを固定化させないような方策をとることが肝要です。
(リーフレット)新型コロナウイルス感染症の影響により国税の納付が難しい方へ(国税庁WEBサイトへ)
コロナ特例の納税の猶予申請書の記載方法について(国税庁WEBサイトへ)
【編集後記】
先日、コロナ特例納税猶予について、確認したいことがあり国税庁猶予相談センターへ電話しました。その時に電話で確認されたこと(申請の不備による税務署からの問い合わせをなくすための予防策と思われます)を紹介します。
・税目
・その税目は、確定か中間か
・納税猶予の対象とする税額の本来の納期限(これにより申請期限が決定します)