【ポイント】
・コロナによる利子補給には「特別利子補給事業」によるものと「都道府県制度融資への無利子化支援」によるものがあります。
・コロナ利子補給金は、交付決定日に全額を収益計上しません。
・その理由を確認していきます。令和3年3月7日現在の情報となります。
政府系、民間系それぞれの利子補給制度における条件は
政府系融資における利子補給制度
「新型コロナウイルス感染症特別利子補給制度」は、政府系金融機関による融資を受けている人を対象にしています。
特別利子補給の対象となる要件は、次のようになっています。
<コロナ融資の特別利子補給制度>(政府系金融機関)
○日本政策金融公庫等から、
○「新型コロナウイルス感染症特別貸付」・「危機対応業務(危機対応融資)」等の特別利子補給の対象となる借入を行い、
○一定の要件(小規模企業者であれば売上高前年比15%以上減少などの要件)を満たす人が、
○貸付を受けた日から最長3年間にあたる利子相当額を一括で助成する制度
新型コロナウイルス感染症特別利子補給制度の概要について
特別利子補給事業についての詳細な情報が得られます。
民間系融資における利子補給制度
一方、「都道府県制度融資(コロナ融資)への無利子化支援」は、民間系金融機関による融資を受けている人を対象にしています。
無利子化支援による利子補給の対象となる要件は、次のようになっています。
<都道府県制度融資(コロナ融資)への無利子化支援>(民間系金融機関)
○指定された民間金融機関から、
○セーフティネット4号、5号、危機関連保証のいずれかの認定を受けた中小企業者が、国の緊急経済対策を活用した制度融資による借入を行い、
○一定の条件(小・中規模事業者であれば売上高前年比15%以上減少などの要件)を満たす人が、
○最長3年間にあたる利子相当額が助成される制度
元本と利息は融資先(日本政策金融公庫等)へ返済することになりますが、3年間分の利息を一括で中小企業基盤整備機構から補給されます。「実質無利子」、「金利負担実質ゼロ」というのはこのことからきています。
利子補給金の収益計上時期
収益の計上時期
法人税法では、各事業年度の所得の金額の計算上、収入の収益への計上時期については、原則として、その収入すべき金額が確定した日の属する事業年度となります(法人税法22条)。
よって、通常の利子補給金の収益への計上時期についても、原則として、交付が決定した日の属する事業年度となります。
特別利子補給制度では最長3年分の借入利息相当額の交付を一括で受けとることになります。3年分の利子補給が交付されることが決定したからといって、3年分(全額)を交付が決定した日の属する事業年度の収益に全額計上することは、果たして適正な処理と言えるのでしょうか。2年分の計上をしすぎているとは思いませんか。
次の事例(特別利子補給制度)により確認してみましょう。
問.
Y社では、日本政策金融公庫からコロナ感染症特別貸付による融資を受けることになり、コロナ特別利子補給制度による利子補給金の交付を申請し、その交付を受けました。
この利子補給金として交付を受けた金額は、その融資に係る利子の3年分に相当する金額です。
Y社では、この交付を受けた金額の全額を、交付決定日の属する事業年度の収益の額として計上しなければならないでしょうか。
X1年9月30日 借入利息20万円が引落しされた
X1年10月31日 3年間分の利息相当として特別利子補給額が60万円入金された
X2年3月31日 一一決算日一一
X2年9月30日 借入利息20万円が引落しされた
X3年3月31日 一一決算日一一
X3年9月30日 借入利息21万円が引落しされた(借入利率の変更あり)
X3年10月31日 利子補給の精算に伴い、その補給額が3年間合計61万円として確定し、差額の1万円が入金された。
X4年3月31日 一一決算日一一
特別利子補給制度イメージ
回答
1.会計仕訳
X1年9月30日 | 支払利息 | 20万 | 預金 | 20万 |
X1年10月31日 | 預金 | 60万 | 前受金 | 60万 |
同 | 前受金 | 20万 | 雑収入 | 20万 |
X2年3月31日 | 決算 | |||
X2年9月30日 | 支払利息 | 20万 | 預金 | 20万 |
X3年3月31日 | 決算 | |||
同 | 前受金 | 20万 | 雑収入 | 20万 |
X3年9月30日 | 支払利息 | 21万 | 預金 | 21万 |
X3年10月31日 | 預金 | 1万 | 雑収入 | 1万 |
X4年3月31日 | 決算 |
2.結論
その支払利子(費用)の発生に応じて、その支払利子と同額の収益を計上することとなります。
この場合の会計処理については、交付を受けた利子補給金の額を、一旦前受金等として負債の部に計上し、支払利子の費用処理に合わせて、その支払利子相当額を前受金等から利子補給金収入等の収益に振り替えることとなります。税務上の取扱いも同様です。
3.理由
・この特別利子補給制度については、事前に最長 3 年分の利子相当額の交付を受けるものの、交付を受けた時点では収益として確定せず、支払利子の発生に応じてその発生する支払利子相当額の収益が確定し、無利子化される性質のものと考えられます。
したがって、特別利子補給制度においては、交付決定日には利子補給額が確定していないことから、利子補給額に係る収入を受ける権利は確定していないと考えられます。
補足事項
特別利子補給制度の目的
・日本政策金融公庫等の一定の金融機関から融資を受けることを条件に、その融資により発生する支払利子を、最長3年間、実質的に無利子とすること。
特別利子補給金の性質
・この特別利子補給制度は、融資契約の変更等により利子相当額が変動した場合には、3年経過後に実際に支払った利子相当額により利子補給額が確定することとされています。
加えて、3年経過後の実際に支払った利子相当額と利子補給額の精算の手続は金融機関において行うこととされており、法人において実績報告などの手続はありませんので、通常の補助金とは手続き面でも異なる仕組みとなっています。
参考:国税庁 国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ
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【編集後記】
ブログをはじめて1年が経ちました。これからも最低週1回更新のペースを守り、続けていければいいかな。