文化芸術スポーツイベントのチケットの払戻しをする前に、コロナ禍でイベントが開催できずに苦しむ関係者へ支援しよう

文化芸術スポーツイベントのチケットの払戻しをする前に、コロナ禍でイベントが開催できずに苦しむ関係者へ支援しよう

2020年08月02日日

ポイント
◉コロナによる政府の行動自粛要請を受けて、ファンの間に感染が広がる最悪の事態を避けるため、イベント主催者は開催中止の決断。

開催中止等のチケットを払い戻さず辞退「=寄附」すると税金が一部控除。

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シルク・ドゥ・ソレイユの公演から10年・・・

今から10年も前のこと…..。

頭の上で繰り広げられた、超人的で、かつ鳥人的なパフォーマンスは、昨日のことのように思い起こされます。

TDRの敷地内「シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京」でのZED公演です。

3年3か月という短い公演期間だったようですが、公演終了の直接のきっかけとなったのは、2011年3月に発生した東日本大震災だったようです。(もともと採算がとれていなかったという報道もありました。)

そして時を経て2020年6月、

”シルク・ドゥ・ソレイユ経営破綻 会社更生手続きへ”(日本経済新聞2020年6月30日掲載)

コロナウィルス感染拡大を受けて当面のあいだ上演をみあわせ、興行収入が途絶えたことから債務の返済ができなくなり会社更生手続きをカナダ最高裁へ申請したようです。(もともと経営上の問題があったともいわれていますが。)

日本国内においても、このことは対岸の火事ではすまされません。

入場料(チケット)を支払ったにも関わらずイベントが中止された場合の代金の取扱い(所得税)

 新型コロナウィルス感染症拡大により、様々な文化芸術のイベント、スポーツの開催に支障をきたしています。そして、感染拡大防止のため数多くのイベント開催の中止や延期がなされ、まさに苦渋の決断がなされています。。また、政府は、当初8月1日より大規模イベントの人数制限を緩和する予定でしたが、延期するとして見送られました。

 そこで下記の例示により、チケット購入代金を支払ったのちキャンセルをした場合の所得税の課税の取扱いについて考えてみます。

3月1日、プライベート目的でコンサートチケット(5月5日開催予定)の前売券9,900円を購入した。
4月17日、政府の緊急事態宣言を受け、開催を中止することが主催者より決定された。
5月12日、主催者側より払戻しの方法が公開され払戻しの受付が開始した。

この例示において
Ⅰ.チケット払戻しを受けることができる場合
Ⅱ.チケット払戻しを受けることができない場合(払戻期間が経過したなど)
の2つに分けて課税関係を考えていきます。

Ⅰ.払戻しを受けることができる場合

時期に応じて取扱いが変わるため分けて考えます。

イベントの中止等による入場料金等の払戻しを請求する権利を
「入場料金等払戻請求権」といいます。
新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための
国税関係法律の臨時特例に関する法律第5条。

1.原則的取扱い コロナ前(令和2年1月31日まで)の権利の行使または放棄

 権利を行使しても、放棄しても課税関係は生じません。(放棄しても家事上の損失になるだけで申告上控除できません。)

2.特例的取扱い コロナ禍(令和2年2月1日から令和3年12月31日まで)の権利の行使または放棄)

 コロナ禍において、チケットを払い戻さず辞退(放棄)することにした損失の金額9,900円を税制上の「寄附金」として寄附金の税額控除の規定の適用が受けられます。

 以下に、減税規模のイメージ感をもっていただくために、文化庁・スポーツ庁ウェブサイトから当該部分を引用します。

文化庁・スポーツ庁HPより抜粋
文化庁・スポーツ庁HPより抜粋

Ⅱ.払戻を受けることができない場合

 払戻期間が経過したなどの理由により払戻しができない入場料は、家事上の経費(損失)として申告上控除できません。

手続きは確定申告で

・確定申告をする必要があります。所得税の確定申告をすれば住民税の確定申告は必要ありません。
・この制度を適用することによる年間の寄附金額上限は20万円です。
・全てのイベントが対象になるわけではありません。下記のイベント及び主催者等の一覧を確認ください。
・各自治体での条例が議会を通過しておらず、詳細がまだわかっていない部分があります。
 

スポーツ庁:チケットの払戻請求権の放棄を寄附金控除の対象とする税制改正
文化庁・スポーツ庁:チケットを払い戻さず寄附することをお考えの方へ
文部科学省:指定行事の中止等により生じた入場料金等払戻請求権を放棄した場合の寄附金控除又は所得税額の特別控除に係るガイドライン
東京都:イベントが中止等となった際に、チケットの払戻しを行わなかった方への税額控除について(個人住民税)
指定行事の中止等により生じた入場料金等払戻請求権を放棄した場合の寄附金控除又は所得税額の特別控除に係る文部科学大臣指定行事一覧7月31日まで指定分(Excelが開きます)

【編集後記】
今日ようやく梅雨が明けたとの報道。
本格的な夏がはじまり子どもたちはいよいよ夏休みに突入。
税理士試験もちょうどこの頃。
当時まだクーラー対応していない初めて受ける本試験の教室で緊張してた時のころを思い出します。
冷房が効いていない部屋で本試験だなんて「部活で水飲むな」と同じ行為ですね。