【ポイント】
年末調整の各種申告書を提出する時期がやってきました。控除証明書がひととおり揃いすぐに勤務先に提出できるよう、日ごろから準備をしておきたいものです。
この時期、控除証明書が契約者あてに送られてきますが、控除が受けられるのは「保険料を支払った本人」(契約者とは限らない)ですので注意が必要です。
ただ、保険料をだれが負担するかによって将来受け取る保険金の課税関係がかわってくるので注意が必要です。
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生命保険料控除とは~制度の趣旨~
生命保険料控除は、わが国において古く(大正12年)から資本蓄積の一環としたひとつの制度として認められてきました。いったんは廃止されたものの、昭和26年の改正により再度創設されたものです。
長期にわたる貯蓄の奨励であったり、相互扶助による生活安定の効果をもつ生命保険を優遇するという趣旨のもと、生命保険が広く世に浸透した今日でも根強く制度として残っています。
生命保険料控除は、年末調整や確定申告をする際に所得から控除される「所得控除」のうちのひとつです。所得税では所得税法76条に規定され、個人県市民税については地方税法34条5項に規定があり、「生命保険料控除」は、みなさんご存じのとおりの代表的な所得控除です。
この所得税法76条
「居住者が一定の生命保険契約の保険料等を支払った場合には、その支払った保険料のうち一定額が生命保険料控除として支払った人の所得金額から控除される」と規定されています。
現在は一般の生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除に区分され、最大で合計12万円の金額が所得金額から控除されます。
控除の対象となる「一定の生命保険契約」とは
所得税法76条5項から9項に生命保険契約の範囲についての説明があります。(5項及び6項は一般の生命保険契約について、7項には介護医療保険契約について、8項及び9項には個人年金保険契約についての説明があります。)
これらの生命保険契約についての範囲の説明には、一貫性があります。
その契約の一貫性とは、「保険金等の受取人のすべてをその保険料の払込みをする者又はその配偶者その他の親族とするもの」ということです。
個人年金保険契約に限っては「契約に基づく年金の受取人は、保険料の払込みをする者又はその配偶者であるもの」となっています。
保険料の払込みをする人と受取人の関係において整理すると、次のようになります。
払込みをする人 | 保険金受取人 | |
一般・介護 | 自分 | 自分または配偶者または親族 |
個人年金 | 自分 | 自分または配偶者 |
契約者とは言わず、いずれも「保険料の払込をする者」と表現し、受取人との関係を規定しています。
まとめると、先の76条の前提はこうなります。
支払った人が支払った人の所得から控除をするという規定
↓
(保険料を支払っていない)契約者の所得から控除をするわけではない
↓
「払込みをする者」と「契約者」は別々に考える
↓
「払込みをする者」と「受取人」との関係を考える
適用例
夫A のもとへ、X生命保険会社から下記の保険契約に基づく控除証明書が送られてきました。
Aは、3年前に 妻B と結婚した際に、B名義の金融機関口座から保険料の引落しがされるよう次の保険契約を締結していました。
契約者 夫A
被保険者 夫A
保険金受取人 満期時A・死亡時B
保険料の引落口座 妻B
保険料を支払っているBは、自身の勤める勤務先へこの控除証明書を添付した申告書を提出しました。
そうすると、経理担当者は錯覚します。
[この証明書のハガキの宛名人は、夫A
めくったページの契約者欄は、夫A
(保険料支払者の記名はないことが多い)]
経理担当者
「これはダンナさんのほうで年調受けてください。」と。
そんなときは、こう言うだけでいいでしょう。
「いえ、私の通帳から落ちているので私のほうで受けます。」と。
*将来受け取ることとなる保険金の課税関係に注意してください。
生存保険金を夫Aがもらう・・・贈与税(暦年課税による基礎控除内であれは課税なし)
死亡保険金を妻Bがもらう・・・相続税(妻Bは相続人なので生命保険金の非課税の適用あり)
国税庁質疑応答事例「妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除」
【編集後記】
先日、iphone12シリーズが公表されました。appleでも5G通信の対応端末を送り出してきたとの報道です。でも私の興味は、5G、広角望遠機能を備えたレンズより、健康寿命を永く延ばすサポートをしてくれる apple watch かな。