住宅ローン控除額における計算の要素
過去に幾度となく(毎年度のように)法律改正が行われてきている住宅ローン控除。
その控除額の計算要素を確認し、考えてみます。
控除額は、「控除期間の各年末の住宅ローン残高 × 控除率」により求められます。この控除期間と控除率は、居住を開始した年が「令和〇年か」により決定し、一部例外を除き、その決定した控除率により控除期間を通じて控除されます。
●住宅ローン控除を計算する場合の要素(おもなもの)
・居住を開始した年
・年末時点での借入金残高
・控除率
・控除期間
・あなたの所得税額等
(年あたりの控除額に上限あり(最高○万円))
(計算された控除額より、あなたの所得税及び住民税の方が小さい場合は、控除額は所得税及び住民税の額が上限となります。そのためにも今後10年間の自分の所得税等をおよそでも知っておくことはとても重要なことです。適用上限額がただ大きければよいわけではなく実際控除額とは関りがないからです。)
住宅ローン控除は、毎年度のように法律改正が行われていますが、先に掲げた5要素のうち十数年も変わることのない要素があります。
それは、「年末時点での借入金残高」です。これは、平成3年度改正から変更されていません。
これまで変わることなく(おそらくこれからも)適用しようとする年の「年末時点での住宅の借入金残高」が控除額算定の基準となっています。
住宅購入のための「借入金」やその「年末残高」が基準*1となっている理由として、「広く納税者に住宅減税の効果が及ぶように」、「納税者にわかりやすい」などがあげられます。
*1昭和47年度の制度創設から昭和61年度の制度改正までは坪当りの床面積に応じた控除額となっていました。
「年末の時点」での借入残高により控除額は計算することから、12月中に繰上返済をするより、1月まで待ってから繰上返済をした方が控除額が当然大きくなります。住宅ローン控除を適用する前提にたてば12月はこらえて1月に繰り上げることとしましょう。
住宅ローン控除の控除率
現在(令和2年中に居住開始)の控除率は1%です。
平成11年以降から居住を開始した人の控除率は1%以下(認定住宅等を除く)となっています。
住宅ローン控除制度は、① 景気刺激策としての制度の拡充、と② 居住形態の多様化に対する制度の適正化を繰り返しながら現在まで適用されており、控除率は下図に示したとおりとなっています。
住宅借入金等特別控除の控除率(青線)(認定住宅等でない場合)
みんなどれくらいの金利で借りているの
いま史上まれにみる超低金利水準です。もっと下がる余地はないのかと問われればなかなか難しいところがあるでしょう。
以下は、三井住友銀行における新規での住宅ローン借入金利です。
(参考)令和2年12月現在
・WEB申込専用住宅ローン・新規
変動0.475%~
5年固定1.0%~
10年固定1.1%~
全期間固定1.28%~
また、2019年に取り扱われた住宅ローンで新規貸出型の金利タイプは、
変動型が75.2%
固定期間選択型は10年が12.4%、その他が8.6%
全期間固定型3.9%
となっています。(下図)
株式会社不動産流通研究所 不動産ニュース 「住宅ローン貸出動向調査」より 2020/12/25
従ってこれらのことから、4人に3人の方が金利1%以下で借りていることになります。
「住宅ローンのマル新常識長期固定に繰上返済はトクしない!?/池上秀司」私が10年前大きな影響を受けた書籍です。勉強になりました。
「医療費控除と住宅借入金等特別控除の手引令和3年3月申告用・大蔵財務協会」私が毎年の確定申告時におおいに参考にさせてもらっている書籍です。
今後の税制改正での論点は
令和3年度税制改正大綱では、住宅ローン控除における来年度へ向けた検討課題として下記の点を明確にしています。
「住宅ローン控除の控除率(1%)を下回る借入金利で住宅ローンを借り入れているケースが多く、その場合、毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払利息額を上回っていること、・・・等の指摘がなされている。」
令和3年度税制改正大綱 自由民主党 公明党
「適用実態等からみて国民の納得できる必要最小限のものになっているかなどの検討が望まれる。」
令和3年度税制改正大綱 自由民主党 公明党
続けて、
「・・・消費税率8%への引上げ時に反動減対策として拡充した措置の適用期限後の取扱いの検討に当たっては、こうした会計検査院の指摘を踏まえ、住宅ローン残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率のあり方を令和4年度税制改正において見直すものとする。」
令和3年度税制改正大綱 自由民主党 公明党 (太字、下線は筆者)
と記されています。
住宅ローン控除が、住宅取得資金による初期負担の軽減を通じて持家取得を促進することにより内需の拡大に資するという観点を持つ反面、住宅購入における資金調達方法(自己資金または資金調達)にまで影響を与えているこの制度への利用実態から考えると、1%を下回るような低金利下においては、その控除率の適正化を主張する国民も少なくないと考えられるでしょう。
前述のように新規の貸出利率は、1%をきっています。
そうすると、そう遠くない将来に次のように考えられなくもありません。
「次のⅠ.Ⅱのいずれか少ない方の率を、年末時点の住宅借入金に乗じた金額につき控除額とする」、
とされるときがやってくるかもしれません。
Ⅰ.「融資で実効されている金利」
Ⅱ.「1%」
となると、市場における金利調整が適正に作用するのかその副作用が懸念されます。
ただ、そうなったとしても住宅ローン控除を適用するとした場面では12月(年末)が経過してから繰上返済するということを考えていきましょう。
【編集後記】
今週からようやく年賀状の印刷を開始。今使ってるプリンターは7年前に購入したもの。
ところが、突然「廃インク吸収パッドの吸収量が限界に達しました。」とのエラー表示。エラーをググって調べてみると、「お客様ご自身での部品交換は、行うことができません。部品交換の作業は、修理対応の期間が経過しており不可能(買い換えてください)」とのことらしい。
しかし、このエラーへの対応についてネット上で詳細に投稿公開されている方がいました(有難うございます)。その指示どおりにやってみると見事に復活(しかもかかった費用は1,000円ちょっと)。
これは日常生活で起こるひとつの例にすぎませんが、メーカーとユーザーとの間の(一方的でかつ、こちらから見えない)情報格差を埋めてくれているネットの存在は、はかり知れずとてつもなく大きいですよね。感謝です。