【ポイント】
・「仮想通貨」はグローバルスタンダードに足並みをそろえるため「暗号資産」へと呼び方がかわりました。
・bit Flyer から発行された「年間取引報告書」から「暗号資産の計算書」をどのように作成するか確認します。
「仮想通貨」から「暗号資産」へ
ビットコイン、イーサリアム、リップル、アルトコインなど、これらは仮想通貨と呼ばれてきました。食事代がビットコイン等で決済できるので決済手段として通貨の側面を持っているためでもあります。
食事に限らず、宿泊やネイルサロンなども仮想通貨で決済できます。
2018年3月、ブエノスアイレスで開かれた G20 で、今まで「仮想通貨(バーチャルカレンシー)」と呼ばれてきたものを「暗号資産(クリプトアセット)」と表現して呼んでいこうではないかと提案されました。
日本ではその後2018年12月、金融庁が「暗号資産」と呼ぶことを正式に決定し、2020年5月には改正資金決済法の施行と同時に「暗号資産」へと呼称が変更されました。(メディアをはじめ仮想通貨ということばは、変わらず今も使われています。)
通貨の一種から資産の一種へと、呼称を変えようとの号令のもとに変わったわけです。
最近の bitcoin価格の高騰ぶりをみれば、モノの交換価値、決済 を表現する通貨としての機能の枠を超えており、通貨と呼ぶより投機商品であると私も考えます。
暗号資産取引への課税
日々、暗号資産は通貨(円やドルなど)と取引(交換)され値動きがあるものです。また、暗号資産は通貨と交換するだけではなく、ほかの暗号資産やモノ、サービスと交換することができます。
この、”手に入れたとき”と”手放したとき”、この二つの時点を把握してはじめて所得の計算をすることができます。手に入れたとしてもホールドしている限りでは所得が発生しません。
暗号資産を取引したことによる所得は、一般的に雑所得とされ総合課税とされます。呼び方が変わったとはいえ所得の課税方法は変わっていません。
暗号資産の証拠金取引による所得についても、申告分離課税となるFX(外国為替証拠金取引)と異なり総合課税により申告します。
年末調整が済んでいる人が暗号資産取引の確定申告をする場合、スマホでできるようになりました。
スマホで確定申告(暗号資産編)国税庁
年間取引報告書を出力する
「bit Flyer」、「Coin check」、「DMM Bitcoin」などは「暗号資産交換業者」と呼ばれます。
これらの暗号資産交換業者からは年間取引報告書が発行されます。
この年間取引報告書は、1か所の暗号資産交換業者から1年につき1枚発行されます。様々な暗号資産についての売買などの取引内容が記載されているものです。
あなたが複数か所の取引所のアカウントを開設していれば、年間取引報告書は取引所の数だけ発行されます。
たとえば、「bit Flyer」のほかに「Coin check」「DMM Bitcoin」などでも暗号資産取引をしていればそれぞれの交換業者から1枚ずつ発行されることになります。
今回は「bit Flyer」から年間取引報告書を出力(PDFダウンロード)してみることにします。ログインをしてしまえば出力するまで所要時間は5分もかかりませんので、まずは出力してみましょう。
まず、年間取引報告書を出力するには、
①自身の「bit Flyer」アカウントにログイン。
②ログイン後、「ホーム」画面の左メニューから「お取引レポート」を選択。
③「お取引レポートのダウンロード」を選択。
④お取引レポートを選択したら、画面が切り替わります。その画面を「年間取引報告書」までスクロール。
まず「計算年」から「2020年」を選択(青ライン)し、そのまま「PDFでダウンロード」を選択。
⑤ダウンロードが開始され、ダウンロードフォルダにPDFファイルが保存されます。
「年間取引報告書」には、暗号資産取引の所得を計算するのに必要な情報が記載されています。この年間取引報告書には何が記載されているのか、次に確認していきましょう。
年間取引報告書のみかた
2020年の年間取引報告書をダウンロードすると、以下の情報が記載されているのがわかります。
当然ですが、所得の計算に必要な金額は円建て(JPY)で記載されています。
通貨 | 暗号資産交換所で取り扱われている暗号資産の名称 |
年始数量 | 2020年1月1日現在所有している暗号資産の数量 |
年中購入数量 | 2020年中の暗号資産の購入数量の合計 |
年中購入金額(JPY) | 2020年中の暗号資産の購入金額の合計 |
年中売却数量 | 2020年中の暗号資産の売却数量の合計 |
年中売却金額(JPY) | 2020年中の暗号資産の売却金額の合計 |
移入数量 | 2020年に購入以外で口座に受け入れた暗号資産の数量*1の合計 |
移出数量 | 2020年に売却以外で口座から払い出した暗号資産の数量*2の合計 |
年末数量 | 2020年12月31日現在所有している暗号資産の数量 |
損益合計(JPY) | 2020年の暗号資産の証拠金取引の損益の合計 |
支払手数料(JPY) | 2020年中に暗号資産交換業者に支払った支払手数料の額 |
*1移入数量には、各種のキャンペーンや「(Login Bonusにより)ビットコインをもらう」などのサービスを利用したことによる取得数量を含んでいます。
*2移出数量には、暗号資産による支払いのための支出数量のほか、他の交換業者へ送付した暗号資産の移動数量を含んでいます。
*1*2これらの取引は、お取引レポートの「bit Wire」(bit Flyer)で確認できます。
「年間取引報告書」から「暗号資産の計算書」へ入力
年間取引報告書をダウンロードすることができました。
次に、年間取引報告書から「暗号資産の計算書」へ入力します。雑所得がどれくらいになるか求めるためです。
「年間取引報告書」から「暗号資産の計算書(総平均法用*3)」(国税庁HP)へ入力すると、雑所得の収入金額と必要経費を求めることができます。
*3暗号資産を売却した際の売却原価の計算方法には総平均法と移動平均法があります。税務署へ評価方法の届出書を提出していない人は、総平均法により評価することになります。(「暗号資産の計算書(総平均法用)」を使用します。)
下記画像は、 bit Flyer の「年間取引報告書」の一部を抜粋したものです。
上記の年間取引報告書をもとに、BTC の通貨を例にとって「暗号資産の計算書(総平均法)」(下イメージ図参照)を作成してみましょう。
それでは、年間取引報告書から暗号資産の計算書に金額を転記して、暗号資産の計算書の右下の収入金額計と必要経費計を求めてみます。(収入金額と必要経費は自動集計です。)
転記記載収入金額は、 762,774円
必要経費は、 778,961円
と求めることができました。この金額を確定申告書へ転記して終了です。
2020年の年間取引報告書の”年始数量”に金額が記載されている方は、2019年の年間取引報告書から2019年の暗号資産の計算書を作成する必要があります。すなわち、2019年の年末残高・翌年繰越欄を求め、2020年の年始数量と金額に同じ金額を転記する必要があります。
また、複数の暗号資産について取引している人はその暗号資産ごとに暗号資産の計算書を作成します。暗号資産ごとの収入金額と必要経費を求めることができたら、合計します。その合算した収入金額と必要経費を確定申告書に転記します。
今回取り上げた暗号資産取引について収入に計上するタイミング(時期)について、よくまとまっている記事をみつけましたので、以下にシェアさせていただきます。(アプリやPCブラウザのなかでしか売買取引をしていない人は、交換所が判断して年間取引報告書の売却金額にするのでタイミング(時期)まで考える必要はありません。)
【編集後記】
Coin check から、580億円もの「NEM」が不正に送金された事件から3年が経ちました。流出先アドレスはわかっていますが、犯人は捕まっていません。通貨をオフラインの「コールドウォレット」で管理していなかったこと、「マルチシグ」に対応していなかったことが、流出を許してしまった原因と考えられています。後に、Coin check から日本円で補償されました。この補償は課税の対象ですが、補償の1NEM88.549円以上の購入単価であれば雑所得はマイナスとなり補償金は申告が不要となります。