こんな人は年末調整のやり直し<再度の年末調整>を

こんな人は年末調整のやり直し<再度の年末調整>を

2020年12月06日日

【ポイント】
・年末調整の各申告書の提出期限は「その年最後に給与の支払いを受ける日の前日まで」とされています。
・その後、その申告書の記載内容について変更があった場合には、一定の期限までならやりなおすことができます。その期限とは。
・年末調整のやり直しができない場合(2月1日以降のやりなおしなど)には確定申告をすることになります。

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年末調整は”1年の締めくくり”

 12月は1年を通じて最後の月。締めくくりの月です。
給与から天引きされた所得税は今年最後の給与の支払と同時に年末調整を経て精算を行います。

従業員は、勤務先へ申告書を提出する必要があり、その申告書の記載に基づいて会社は税金を還付したり徴収したりします。このように年末調整は重要な手続きです。

 その申告書は、法律上「その年最後に給与(または賞与)の支払いを受ける日の前日まで」に提出しなければいけないことになっています。
 実務上は、勤める会社ごとにいつまでに提出してほしいと提出日が設けられていることでしょう。

 その、提出締切日をすぎてから年末までの間に、「家族の事情が変わった」とか「申告書の記載に変更があった」などの事由に該当する人は、年末調整のやり直しを申し出てみましょう。

 

年末調整をやりなおしたいとき

 年末調整は「その年最後に給与(または賞与)の支払いを受ける時」をもって完了します。

 なぜ最後に・・・支払いを受ける時なのか、それはその年最後の給与額の確定をもって年末調整の税額計算が終了し、給与の支払いと同時に還付金を支給することが通例であるためです。

 この年末調整において控除対象扶養親族に該当するかどうか、保険料をいくら支払ったかなどは、年末調整を行う日の現況により申告書に記載しますが、その判定の要素となる合計所得金額、年齢等はその年の12月31日の現況により判定します*1
*1令和2年分年末調整のしかた15ページ参照

 そこで「年末調整を行う当日」の見積もりと、「12月31日」の確定にはタイムラグがあるので、どうしても年末調整のやり直しをする人が少なからずでてきます。

 例えば、やり直しが生じてしまうやむを得ない事由のひとつは、次のように合計所得金額に差異が生じたときです。

 年末調整の際、合計所得金額は年末調整を行う当日の現況により見積もっていますので、見積もった合計所得金額確定した合計所得金額(12月31日に確定する)とに差異が生じるのはやむを得ないことです。

 これは一例にすぎませんが、やり直しについては税務署から各企業のもとへ送られる「年末調整のしかた」(冊子)に、きちんと掲載されていますので、年末調整のやり直しを申し出たい人は会社へその旨を話しましょう。

 本記事に、やりなおしに該当するおもな事例を投稿していますので確認してください。

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年末調整をやりなおせる時期は

 「所得税の精算をいつ」行うか」によって手続き方法が変わります。これについておおまかに説明してみます。

各申告書の記載内容の誤りを訂正したい、または追加したいと申し出た日が、

・会社が指定した年末調整各申告書の提出締切日までの日
・・・訂正前を訂正後の申告書に差し替えて年末調整を行う。

・1月31日(または会社が指定した日)までの日
・・・年末調整のやりなおし(再年末調整)をする。

・2月1日以降の日
・・・再年末調整はできないので自分で確定申告をする。

となります(勤務先の対応によって変わることもあります)。

どうして「再年調」は1月31日までなのか

 年末調整のやりなおしは、1月31日までだと言いました。それでは、なぜ1月31日までなのでしょうか。

 年末調整をすると、勤務先から本年中の給与等の金額、所得税等の金額が記載された「給与所得の源泉徴収票」を受け取ります。

 そしてもともと、会社(給与の支払者)は「給与所得の源泉徴収票」を作成する義務があります。

 この「給与所得の源泉徴収票」は「公的年金等の源泉徴収票」、「株式等の譲渡の対価等の支払調書」、「特定口座年間取引報告書」などと並び「法定調書」と呼ばれる書類のひとつです。いずれも、個人番号(マイナンバー)を記載する重要な書類となります。

 会社はこの作成した「法定調書」を「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」(幾種の法定調書を種類ごとに集計をとった表)と併せて税務署へ提出します(提出が義務付けられています。)

 この「法定調書」すなわち「給与所得の源泉徴収票」の提出期限が、毎年1月31日(令和3年は2月1日)なのです。

 そして、従業員の年末調整のやりなおしにより「給与所得の源泉徴収票」は再発行され、同時に会社が税務署へ提出する「法定調書」(給与所得の源泉徴収票)及び「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」についても訂正、追加提出(やり直し再提出)が認められています。

 

こんな人は再年調を

 こんなときは年末調整のやりなおしを考えてみましょう(下記に掲げる以外にもやりなおせるケースがあります。)。
 該当する申告書を再提出する必要があります(該当する申告書のリンクを貼っておきます。)

 

1.今年最後の給料または賞与の支払い後に、子どもが生まれた人

令和2年から創設された「所得金額調整控除」
の適用を受けることができます。

(給与年収850万円を超える人が対象です。)

この控除の要件の一つにあげられているのが、
「年齢23歳未満の扶養親族を有していること」です。
生まれてまもない赤ちゃんは、扶養親族になりますのでこの要件に該当します。
(控除対象扶養親族にはカウントされないので扶養控除額の適用はありません。

該当する申告書:令和2年分基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(入力可能)

 

2.今年最後の給料または賞与の支払い後に、生命保険料または社会保険料を支払った人

例A ”12月に生命保険を契約して初回の保険料が引き落とされた”

勤務先に「支払いを証明できるもの」を提出しましょう
(勤務先に提出した控除証明書(ハガキ)は発行日時点
保険会社が把握できうる金額しか記載されていません)

一般的に、生命保険会社は保険料の払い込みが
確認でき次第、順次送付しているようです。
急がれる人は契約保険会社に問い合わせてみましょう。

 

例B ”子どもが20歳になり国民年金保険料をコンビニで支払った”

勤務先に領収書を提出しましょう
(勤務先に提出した控除証明書(ハガキ)は発行日時点
年金機構が把握できる金額しか記載されていません)

令和2年10月1日から12月31日までの間に、
令和2年中に初めて国民年金保険料を納付された人は、
翌年2月5日に控除証明書が発送されます。<日本年金機構HP>
また、
保険料控除の対象となる支払保険料は、
親族が負担することになっているものを
本人が支払ったものも対象
になります。

例A.Bの該当する申告書:令和2年分給与所得者の保険料控除等申告書(入力可能)

 

3.申告書に記載した配偶者の年収に差異があった人

 配偶者控除または配偶者特別控除の適用を受けるためには、配偶者控除等申告書に配偶者の年収を「見積もり」で記載しなければいけません。見積もりで記載しなければいけない一方で、申告書の提出日までに配偶者の年収が「確定」しているケースはまれです。

「見積もり」と「確定」に大幅な差異があれば、再度申告書を提出しましょう。

配偶者特別控除額は、年収が「5万円」増減するごとに 2~5万円 かわります。

配偶者特別控除額の控除額

該当する申告書:令和2年分給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(入力可能)

 

4.うっかり記入を忘れてしまった人など

年末調整各用紙のダウンロード(直接入力できます)
ページが開いた後、該当する申告書をダウンロードして下さい。
令和3年分(令和2年分)扶養控除等(異動)申告書・基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書・保険料控除申告書

 

【編集後記】
令和3年度与党税制改正大綱が10日に発表される予定です。コロナ禍による景気悪化への対応で、増税の見送りや減税の特例の延長措置が目立ちます。