先日、国税庁より「個人に対して国や地方公共団体から助成金が支給された場合の取扱い」として新型コロナウイルス感染症等の影響に伴って支給を受ける助成金、給付金等の課税の取扱いが公表されました。
【関連記事】「持続化給付金は課税対象に」の理由は(新しいタブが開きます)
【関連記事】「家賃支援給付金」はいくら支給される?自動計算(新しいタブが開きます)
【関連記事】納税猶予コロナ特例の有効的な活用を考えてみましょう(新しいタブが開きます)
目次
所得税は、何について(範囲) 課されるのか
所得税法第5条(納税義務者)に、「居住者は、この法律により、所得税を納める義務がある。」と規定されています。
本条では、「納める義務」があるといっているだけで、何についてを、どのように計算して、いつまでに、どこへ、といったことは規定されておらず同法の別の規定や施行令、施行規則などに定められています。
そこで、今回は「何について(範囲)」所得税を納める義務があるのか、に焦点をあててみたいと思います。
所得のとらえ方は「包括的所得概念」で
わが国では所得についての範囲をどのようにとらえているか、これは「包括的所得概念」という伝統的な考え方を支持していることからきています。
この「包括的」は「制限的」所得概念の対義であり、網羅的だとか全て、などの意味に置きかえられます。
所得税法では、所得を10種類(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、これらに含まれない所得は雑所得)に区分しています。
最後にあげた雑所得(所得税法35条)を設けることで、とりこぼしなくすべての所得を課税の対象としますよ、ということを意味しています。
このことから、雑所得は、包括的所得概念を所得税法の体系に取りいれていることをよく表しています。
非課税になるもの
一方で、「担税力が弱いもの」や「二重課税」、「政策的見地から」などの理由により所得税が課されないもの(法律で明確に定めています)があります。これを非課税とか非課税所得といいます。
所得税法第9条(非課税所得)や10条(障害者等の少額預金の利子所得等の非課税)では、次に掲げる所得には所得税を課さない、として「税を課さないもの」を列挙しています。
例えば、
遺族年金
給与所得者が受ける通勤手当で一定のもの
生活用動産で30万円以下など一定のものの譲渡
ノーベル賞として交付される金品
オリンピック選手が交付を受ける金品(*1)
相続、遺贈、個人からの贈与により取得するもの
(*1)令和2年度税制改正でパラリンピック選手も含まれることになりました。
など…..
これらにはすべて所得税がかかりません。
特別定額給付金(ひとり10万円)は非課税に
国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ
5 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係
<所得税に関する取扱い>問9より
今回、国税庁から公表された取扱いとして、非課税を定めているものは次の理由によるものからです。
1.所得税法の規定により非課税とされるもの
2.助成金などの支給の根拠となる法令(新型コロナ税特法など)の規定により非課税とされるもの
なかでも、特別定額給付金は上記でいう 2.の理由により非課税となります。
法律の根拠は、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(いわゆる新型コロナ税特法)の4条1項一号に規定されています。
この法律の制定による趣旨(新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置が納税者に及ぼす影響の緩和を図るためとすること)からも非課税とする理由がわかります。
新型コロナ税特法4条
市町村又は特別区から給付される給付金で次に掲げるものについては、所得税を課さない。
一 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響に鑑み、家計への支援の観点から給付される財務省令で定める給付金
ここでいっている給付金は、特別定額給付金のことです。さらに第2項でこの給付金を受ける権利は差し押さえができないことも規定されています。
【関連記事】「持続化給付金は課税対象に」の理由は(新しいタブが開きます)
【関連記事】「家賃支援給付金」はいくら支給される?自動計算(新しいタブが開きます)
【関連記事】納税猶予コロナ特例の有効的な活用を考えてみましょう(新しいタブが開きます)
非課税だが、「その非課税相当額を○○から控除・・・」に注意
所得税法施行令第30条(非課税とされる保険金、損害賠償金等)には、生命保険契約に基づく給付金で身体の傷害に基因して支払いを受けるものには所得税を課さないと規定されています。
これには、生命保険会社に申請をする入院給付金、手術給付金などが該当します。
しかし、この施行令30条に規定する医療費を補てんする保険金・給付金は、医療費控除を受ける際の医療費から控除しなければいけないことになっています。
給付金は非課税ですが、一方では医療費控除額をその分少なくせよ、と定めていますので入院給付金などを受け取っている方は、医療費控除額の計算の際に注意が必要です。
【編集後記】
先日、News Picks の WEEKLY OCHIAIに出演されていた冨山和彦さん(株式会社経営共創基盤 CEO)の新著を購入しました。
“「Turnaround から Transformation」へ、「一気呵成」に「昭和から令和」へとぶ”