ポイント
・年末調整還付金は、同じ家族構成であっても「多い人」と「そうでない人」がいて千差万別です。
・還付金の額は、「人的な控除」と「物的な控除」の適用による影響に左右されます。
・還付金の額=毎月給与から天引きされる所得税額の合計額ー年末現在の現況により適正に計算した所得税額。
・年の途中で給与の大幅な増減があったときなどは還付金が多くなる傾向があります。
今年の年末調整に向けて
国税庁WEBサイトでは、「年末調整のしかた」や、「年末調整における改正点」などが解説としてまとめられています。いよいよ本格的な年末調整に向けての準備期間に入ってきました。
今年は年末調整をはじめ所得税の関係に多くの改正が入っています。年末調整に関係する改正点を以下に整理してみます。
・給与所得控除額の改正【過去記事】2020年、税制改正によってフリーランスに追い風に
・基礎控除額の改正【過去記事】2020年から基礎控除額が改正に
・所得金額調整控除の創設【過去記事】令和2年から適用される所得金額調整控除、その背景にあるものは「所得」制限との「調整」か
・ひとり親控除の創設・寡婦控除の改正【過去記事】令和2年分からの「ひとり親控除」と「寡婦控除」を整理してみましょう
・年末調整手続の電子化
年末調整はその年の「税」の精算(還付)を受けるため
サラリーマンの収入はよく「ガラス張り」だと言われます。
会社は、①給料や賞与を支払うとき所得税を天引きし、②その年最後の給料を支払うとき年末調整をします。そして、③年末調整をした後の源泉徴収票を市区町村へ提出します。①、②、③は、いずれも勤め先である会社が行います。このようにして、「年末調整」で所得税が精算(課税が完結)され、同時に「源泉徴収票を市区町村へ提出」されることで県市民税の報告(課税が完結)がされます。
確定申告をするまでもなく、会社を経由して国や自治体に収入が把握されます。ガラス張りと言われる所以はここにあります。
そして、「年末調整を受けない人がいる?」ということを想定してか、国(課税庁)側は、年末調整をしないことによる追徴税額の支払いをしないことのいわゆる「逃げトク」を生じさせないように、源泉徴収制度が成り立っていると思われます。(要するに、毎月天引きされる所得税はやや多めとなっています。)
そしてこの年末調整の還付金の額は、次のような算式によって表されます。
還付金の額=毎月給与から天引きされる所得税額の合計額ー年末現在の現況により適正に計算した所得税額
計算結果が、プラスは還付(超過)、マイナスは徴収(不足)となります。
算式からわかるように、還付金が多い人とそうでない人がいる理由は、この差額が多く生じるかそうでないかということにつきます。すなわち、年初から年末にかけて生活環境や家族構成が劇的に変わった人ほど多くなる傾向になるということがいえるでしょう。
日ごろから気を付けておきたいこと
なにげなしに、毎年「給与所得者の扶養控除等申告書」などを勤務先に提出していることと思いますが、次にあげるA.Bに目を配っておくとよいでしょう。
A.毎月徴収される所得税の判定要素として
1.あなたが障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生に該当するか。
2.配偶者の給与年収が150万円以下かそうでないか。
3.年齢16歳以上の扶養親族がいるか。
4.年齢70歳以上の扶養親族がいるか。
5.扶養親族のうちに、障害者がいるか。
(扶養親族は、あなたと生計が一緒で給与年収が103万円以下の人のこと)
以上のようなことを、年の初め頃に提出する「給与所得者の扶養控除等申告書」へきちんと記載しているか確認しましょう。
仮にしていなかったとしても、12月の給与支給時の現況により「給与所得者の扶養控除等申告書」を再提出してきちんと記載すれば足ります。12月の給与支払いの際に還付金として取り返せるということです。
B.年末時点において計算される所得税の判定要素として
年末の時点における「人的な控除」(*1)に加え、「物的な控除」(*2)(社会保険料控除は反映済なので除く)が計算判定の要素となる。
年末調整の際に控除されることとなる所得控除は、(*1)「人的な控除」と(*2)「物的な控除」とに分けられます。
「人的な控除」・・・扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、障害者控除、寡夫控除、ひとり親控除、勤労学生控除
「物的な控除」・・・社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除
還付金を多く受け取るに越したことはないです。その多くの還付金が発生した原因が、①申告書の記載違いによる還付なのか、それとも②年末調整による「物的な控除」によるものか、または家族状況の変化による還付なのかつかんでおきましょう。毎月天引きされる所得税を最小限にして、余計な税金をとられないよう気を遣うことが肝要です。
【編集後記】
今乗ってる車は買ってから今年で丸10年、走行も10万キロを超えました。子どもが大きくなってきたので「そろそろ車の買い替え時期かな」と検討中です。